「"こんなことあるわけないだろう!"が逆にイイ。」町田くんの世界 Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
"こんなことあるわけないだろう!"が逆にイイ。
多くが自分のことしか考えていない。相手のことを想像できることが実は大切。
町田くんは地味で不器用な高校生。唯一の取り柄は、接したすべての人を愛し、困った人を絶対に救おうとしてしまう奇特な才能を持つこと。
昨今のニュースで取り上げられる事件や社会問題のほとんどは、自分以外への想像力の欠如が引き起こしていることばかりのように思える。
"性善説"的な立場を取る、「町田くんの世界」は、現実社会に渦巻く悪い雰囲気に、バカ真面目にぶつかっていく。
"こんなことあるわけないだろう!"とツッコミどころも満載。風船で人が飛ぶといった、マンガ的な表現をあえて残したところが、新鮮に映る。
石井裕也監督は「舟を編む」(2013)で、日本アカデミー賞の最優秀作品賞をはじめ6部門を独占。「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」(2017)では、詩集の映画化に挑戦した。
こんどは監督初の少女漫画(別冊マーガレット)の実写化。第20回手塚治虫文化賞で新生賞を受賞した安藤ゆきの同名コミックが原作だ。
周囲の人々を幸せにする町田くんが、ある日出会った女の子・猪原さんは、これまでとは違っていた。"恋愛感情"をテーマにしたユーモラスな作品。
主人公の町田くんと猪原さんに、オーディションで新人の細田佳央太と関水渚を抜てき。そのキャスティングも狙い通り。あえて意図的な演技をさせない。代わりに共演者に強者をズラっと揃える。
町田くんの母親は、松嶋菜々子。ほかにも太賀、岩田剛典、高畑充希、前田敦子、池松壮亮、戸田恵梨香、佐藤浩市、北村有起哉・・・ふつうなら主役を張る役者ばかり。このバランス感覚が不思議を加速する。
今のように知名度が広がるまでは、似ていると言われ続けた高畑充希と前田敦子の共演も意外だ。
ほかに現役高校生女優なんていくらでもいるのに、この2人に女子高生の格好をさせるのは、前述のバランス感覚ゆえと信じたいが、もしかして監督の趣味? いくらなんでも本作がギリギリ最後だろう。
主演デビューとなった、細田佳央太(ほそだ かなた)はアミューズ所属になるので、これからたくさんの映画で観ることになるに違いない。
佐藤健、神木隆之介、吉沢亮、福山雅治、三浦春馬、賀来賢人、野村周平・・・だからね。
(2019/6/7/ユナイテッドシネマ豊洲/シネスコ)