「川の底から空の果てまで、石井裕也映画はいつでも最高にブッ飛んでる」町田くんの世界 AuVisさんの映画レビュー(感想・評価)
川の底から空の果てまで、石井裕也映画はいつでも最高にブッ飛んでる
安藤ゆきの原作漫画のファンも、広い心で終盤の改変を楽しんでほしい。そもそも、恋する感情がわからない主人公という少女漫画の常識を覆すキャラ造形で高評価された傑作なのだ。石井監督も原作の常識にとらわれない革新性、自由さに共鳴してあの展開を考えたはず。もし原作により忠実なアニメやドラマが今後作られたら、ぜひ観たいとも思うが。
新人の細田佳央太と関水渚は、巧みな演出、達者な共演陣のおかげもあり、佇まいや会話に作為を感じさせない。映画世界の中で自然に生きていると言ってもいい。特に関水渚は近年の『渇き。』の小松菜奈や『ソロモンの偽証』の藤野涼子に匹敵する鮮烈なデビューだと思う。
善意の人を主人公にした話として『ペイ・フォワード 可能の王国』や『横道世之介』を想起させる。偶然だろうが今年4月の『幸福なラザロ』と共通する要素も。観た人の数だけ世界が少しずつよくなる、そう思わせてくれる映画だ。
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