「呪いと哀しみの川の底から」ラ・ヨローナ 泣く女 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
呪いと哀しみの川の底から
当代ハリウッドきってのホラー・マスター、ジェームズ・ワン製作による新作ホラー。
…と思っていたら、本作も“死霊館ユニバース”の一篇!
そしたら俄然興味が沸き、題材の面白さも相まって、密かに楽しみにしていた。
あの最恐人形にもチラッと触れられ、ユニバースではお馴染みのあの神父さんも登場するが、直接的な繋がりではなく間接的。分からない人には分からない、分かる人には分かる、ニヤリとする程度のリンク。
なので、本作は本作で一本のホラー作品としてすんなり見れる。
ソーシャルワーカーのアンナは、母親に監禁されている子供たちを保護。が、子供は“あの女”から隠れているという。
ほどなく、保護した子供たちが川で溺死。子供たちの母親は不可解な言葉を発する。
あの女、“ラ・ヨローナ”のせいよ!…と。
ラ・ヨローナとは…。
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・メキシコ…
村で評判の美人が居た。ハンサムな男と恋に落ち、結婚し、子宝にも恵まれた。
が、愛していた夫が裏切りの浮気。嫉妬に狂った妻は、夫の最も大事な宝物を奪った。それは…
自らの手で、我が子を川で溺死。我に返り、自身も心中した…。
メキシコに伝わるラ・ヨローナ=“泣く女”の怪談。
水辺をさ迷い、悪さをする子供をさらいに来るという大人たちの言い伝えは日本で言う所のなまはげ、哀しい女霊の怨念は『四谷怪談』のお岩さんといった感じ。
そんなラ・ヨローナが言い伝えではなく、襲い来る…。
アンナは幼い兄妹のシングルマザー。
子供たちにそして我が身に怪現象が起き、それは危険に。
母子はラ・ヨローナに狙われていた…!
まずは、ラ・ヨローナ。
薄汚れた服に身を包み、顔はベールで隠され…。
が、時折覗くその顔面インパクトは、アナベルさんやヴァラクさんにも負けない。
いずれ、この御三方の恐怖共演を…。
神出鬼没。
突然ゆらゆらふわふわと現れ、突然消え、そしてまた突然…!
車の窓ガラスやビニール傘に浮かぶその姿。
家の中に突然現れ、襲い掛かり…。
極め付けは、風呂場で…。見せ場の一つの恐怖シーン。
『死霊館のシスター』のコリン・ハーディ監督の演出はちと派手で過剰だったが、本作のマイケル・チャベス監督の恐怖演出はジェームズ・ワンのスタイルを踏襲。マスターから本家の第3弾の監督に抜擢されたのも頷ける。
メチャ怖いってほどではないが、独特のメキシコ怪談の味付けもあって、雰囲気はじわじわ上々。
水、母と子、怖さと哀しみの物語は、中田秀夫監督の『仄暗い水の底から』を何処となく彷彿。
話は、アンナは子供たちを守る為、信仰心を捨てた呪術師の力を借りて、恐ろしい女霊に立ち向かう。
シンプルで、尺も90分ほどで、見易い。
だけど、ちょっと物足りない。
クライマックスの対抗の儀式もこぢんまりというか、あっさりというか…。
『死霊館のシスター』ほどではないにせよ、もうちょっと大きな展開や見せ場が欲しかった。
何より物足りなかったのは、ドラマ性やラ・ヨローナの描写。
立ち向かう母子愛や呪術師の信仰心再びはいいとして、ラ・ヨローナが単なる邪悪なる存在としか描かれていない。
確かに恐ろしい女霊だが、哀しい女でもある。
“泣く女”なのに、悲劇の描写はあくまで設定だけで、その哀しい存在や背景も描いて欲しかった。
『アナベル』の第1作目同様、本作はラ・ヨローナ恐怖事件の一つで、もし続編が作られたら過去に遡ってその哀しき誕生秘話を見てみたい。やりようによってはいい出来になるかも…!?
死霊館ユニバースもこれで通算6作目。
ちなみに好きな順番は、『死霊館1』→『同2』→『アナベル2』→本作→『死霊館のシスター』→『アナベル1』かな。
ユニバースでもズバ抜けた作品ってほどではなく、ユニバースも広げ過ぎて興行収入の伸び悩みに表れている気もするが、それでもジャジャーン! 一定の期待を裏切らない上々のホラー・シリーズ。
公開間近の『アナベル3』もそして本家第3弾も、やっぱり見たいのである。
近大さん、浮遊きびなごです。
コメント返信ありがとうございました。
さすが、こちらが水を向けずともアナベルも狼男イングリッシュも押さえられていましたか!
毎度毎度共感票いただいてばかりもナンなので、ちょっと気合入れて近大さんのレビューを初期から読ませていただきました。
懇意にしていただいてる方のレビューはザッと目を通すようにしてるんですが、近大さんのレビューは多過ぎて躊躇してたんですよね(苦笑)。
既読レビューが増えてきた辺りで止めましたが、いやはやホントに多彩な作品をきっちりレビューされてますよね。
ちょっと真面目ぶって書きます。
僕も随分前からこのサイトに参加させてもらってますが、最近はナイフみたいに短く薄い言葉で気に入らない映画や作り手を攻撃するだけのレビュー(と呼びたくもない代物)やコメントも多く見掛けるようになりました。
ですから、これだけ沢山レビューを書かれているなかで、1作1作丁寧に、なにより作り手そして映画に愛着と敬意を持って書かれてる近大さんのようなレビュアーさんって稀だと思います。なので今後もレビュー楽しみにしておりますよ。
あ、僕のレビューを全部読み返すとかは勘弁してくださいね! かえって気を遣ってしまうんでホントのホントにご勘弁を。
また気の向いた時にでも読んでもらえれば是幸いですし、共感できなければバッサリ切っていただいて結構です。そっちの方が自分も気合入れてレビュー書けます。
毎度長々とすみませんが、返信もお気になさらず。
良い週末をお過ごしください。では!
ギャー! 近大さん、色々と
共感票ありがとうございます!
浮遊きびなごです!
自分でも書いていたのを忘れてたようなレビューまで読んでいただけて恐縮です……。アプリで共感票を入れた方が分かるのは一長一短だと感じるんですが、こういう場合は有難いもんですね。
さておき、『ラ・ヨローナ』は怖かったですが、何かもうひとヒネリが欲しかった感じでしたねぇ。次の『アナベル 死霊博物館』はホラーネタ盛り盛りのようで楽しみにしてます。ニポンのオサムライも化けて出るとか出ないとか。
『死霊館3』公開もそう遠く無いはず。ウォーレン夫妻がイギリスで遭遇した事件が元になるという噂。監督がジェームズ・ワンではなく『ラ・ヨローナ』の監督になるというのが若干の不安要素ですが……脚本はワン監督なのでまずは期待です。
毎度長々すみませんが、
今回はこの辺で。返信お気になさらず!
次回レビュー楽しみにしております。ではでは!