劇場公開日 2019年6月22日

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「☆☆☆★★ ほんの少しだけ加筆改定しました。 原作読了済み。 流石...」ある町の高い煙突 松井の天井直撃ホームランさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0☆☆☆★★ ほんの少しだけ加筆改定しました。 原作読了済み。 流石...

2019年9月9日
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☆☆☆★★

ほんの少しだけ加筆改定しました。

原作読了済み。

流石に昭和の文豪、新田次郎が描く明治時代の話は重厚で。最近読んだ小説の中では1番読み応えのある内容でした…中盤までは(-_-)

読み始め。最初の20ページ辺りで、「これ…この時点で、早くも連続ドラマ1話分あるんじゃないか?」と思わせる程に、熱量が溢れる内容でした。

「これを映画にしたら一体どうなってしまうのだろう?」
中身のスカスカな映画と違い、どこまで2時間とゆう尺の中で収められるのだろうか?…と。読み始めた時に、本気でそう考えたくらい( ゚д゚)

「お国の為に尽くしたい。でもそれが叶わない」そんなこの主人公が、あの名作『素晴らしき哉、人生』のジョージ・ベイリーと重なり、ワクワクしながら読み進めたのでした。

それにしても昭和の文豪の筆力は凄い!とゆうか、実に手強い!
普段、小説を読む時には。1ページ辺りの目安として、大体1分を目安と考えているのですが。この小説は凡そ1・5倍増しくらいに、読み込むのに苦労したのでした。
情景描写や周りの人間関係。細かな人間描写等、とにかくこちらが普段、読み易い小説を好んでいた事もあり。かなりヘトヘトになりながらの読了となりました。

ただ、小説として秀作であるのは間違いは無いのですが。歴史的な事実を曲げて描く事はならないわけで…序盤はワクワクした内容ではあったのですが。中盤から徐々に(悪人が登場しないだけに)勧善懲悪劇としては成立しなくなるにつれて、その面白味が薄れて行ってしまったのが大きな問題だったと思います。
これが映画オリジナルな脚本で。例えば、マキノ映画の様な勧善懲悪劇として。仮に主人公が高倉健の様な無骨で実直な男。会社側の社長が、金子信雄や山形勲の様な、素晴らしき悪役俳優による勧善懲悪劇だったならば、エンターテイメントとして成立していたのでは?…と、思わずにはいられない。

それだけに、中盤辺りからは。千穂とゆう女性が登場し、主人公との関係に於いて重要な意味を持つのですが。終始、プラトニックな関係のままで。(当時の恋愛模様とすれば、おそらく普通の状況なのでしょうが)
寧ろ、義理のお祖母さんの存在こそが。千穂を丑の刻参りで呪い殺そうとする辺り、悪役として相応しいのでは…と、思ってしまうくらいヽ( ̄д ̄;)
肝心要の高い煙突も、小説だといつのまにか出来てしまっていて。歴史的な事実だとそれまでに様々な困難や紆余曲折あったのでしょうが…。

…と。ここまでが、取り敢えず原作を読んだ簡単な感想。

以下、鑑賞直後に於ける映画の簡単な感想になります。

先ずは原作自体が、外国人技師オールセン(映画ではヨハンセン)との長年に渡る友情の物語であるのですが。肝心のオールセンは最初にほんの少しだけ登場するだけ。
だからか?原作に描かれたラストシーンでの再会も無い。それにより許婚者のみよの存在は全てカット。
と…なると、お祖母さんのいねの存在もカット…と。なんだか尺の関係を考慮した結果か?最低限これだけは必要と考える人物・エピソードから逆算して、苦心して割り出した…様に見える脚本に見えました。
そしてオールセンより。会社側でありながらも、三郎を始めとする農民側に寄り添う加屋淳平との友情。その妹の千穂との恋愛模様に重点を置いた話になっている。

その結果と言えるのかどうか?残念だったのが、(原作では)孫作に殴られそうになる三郎を助ける為の、みよの薙刀場面は無くなり。当然の様に、千穂の存在を疎ましく思ういぬが、千穂を丑の刻参りで呪い殺そうとする場面もカット。何しろいねは、結核で千穂が死んだ事を知ると、「ざまあみろ!」と罵るくらいに強烈な人物像だっただけに残念無念。何せ2人共に存在自体が無くなっちゃいましたからね〜(-_-)

そして原作で1番重要と思っていた、千穂が弦月に乗って峠を越える場面。
映画版では実にあっさりと描かれていたのですが。本来ならこの場面。結核に冒された千穂は。三郎を愛しながらも、許婚者のみよが居る為に自身の願いが叶わないのを知りながら。昔からの儀式として、花嫁は馬に乗って嫁ぐ村へ行く…その願いが叶わないからこそ、その想いを胸に秘めての弦月に乗っての峠越えであり。その想いを胸に余命を生きる決意をする。
でも映画では。千穂はまだこの時に、その様な想いを持ってはおらず。2人の恋愛感情のあり方、千穂の三郎への想いの強さが薄まってしまったのは実に残念でした。
この場面が有るからこそ、終盤での茅ヶ崎の療養所での別れの辛さに繋がっているだけに…。

原作だと、あっという間に出来あがってしまう高い煙突。
オールセンとの、長年に渡る往復書簡からヒントを得ての煙突建設だったのですが。映画版では、美穂との報われなかった愛の想いからヒントを…と、ここは(歴史的な事実は不明ですが)原作と変えており。より映画全体が、恋愛劇として観客に提示されている気がしました。
映画版では多少は困難な工事だった(様に見える)のが伺われるものの、原作での終盤の失速感。映画版では原作同様に悪役が居ない事によるアッサリ感…と。
「悪くは無い…」とは思うものの、満足感を感じるにはもう1つ…と言ったところでしようか。

出演者の中では渡辺大が良い。
はっきりと意識したのは『RUN3』の頃からでしたが。何しろ父親があの渡辺謙だけに、色々と苦しみも有るでしょうが、今後ともに注目して行きたい。今なら親子共演をしたとしても、充分に観客の期待に応えてくれるのでは?と思っている。

そしてもう1人、伊嵜充則。
子役時代からそつのない演技で印象に残る顔でした。ただ残念ながらこれまでに代表的…と言える作品が無いのも事実。寧ろ、ドラマ「味いちもんめ2」がそれにあたるか?と言った感じで…。
この作品での恒吉は、久しぶりに目立った役だっただけに。是非とも今後に生かして欲しいところです。

2019年6月27日 スバル座

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松井の天井直撃ホームラン