「主役を間違えなくとも『平凡かつ盛り上がらない』に落ち着く」野性の呼び声 mokusin takataniさんの映画レビュー(感想・評価)
主役を間違えなくとも『平凡かつ盛り上がらない』に落ち着く
原作を知らず、映画館の予告で大好きな俳優『ハリソン・フォード』がさも
主演的な押し出しだったもんだから、やたら表情豊かなCG犬『バック』は
準主役だと思って見に行った(この勘違い自体は正直些末だったが)
実際は『バック』がメイン中のメインで、映像の大部分は彼の顔か全体像で
構成されていて、やたらプッシュされていたハリソンフォードの本格登場は
中盤なのが実情。(要所でバックとちょっぴり交流はしている)
ハリソンはバックの犬生に影響を与える人間として重要人物ではあったが
予告で感じた主役感はあまりない、バックの犬性を語るナレーターとしてなら
初っ端から出てるが、もっとガッツリと主演してると思っていた身としては
正直肩透かしを受けた気持ちだ。例え勘違いせずに見たとしてそもそも
予告で謳った“雄大な大地を舞台に老人と犬の冒険活劇&感動巨編”が
蓋開ければそこまで冒険してないというか、前半での雪崩シーンをピークに
中盤~後半はどうも盛り上がらないままでハリソンが逆恨みの強欲男の凶弾
で死にバックは色々あって狼の長に落ち着いたところで終幕---何というか
駄作と言う程悪くないが平凡で起伏の少ないストーリーだった印象に加え
細かい所で気になる点が散見しており、手放して良作とは言い難い。
何か良い所を挙げるならば、本作はゴールドラッシュ時代のアメリカを
舞台にしていて“こんな事が起きていた”や“こういう仕事があった”など
歴史の勉強ができ、実際に撮影しにいったであろうユーコンの自然と川には
実に奇麗でぜひ行ってみたいと思うのと“準主役”のハリソンが水浴びしてる
シーンで80歳間近とは思えないマッシブな体に私が楽しみで仕方がない
『インディジョーンズ5』でも元気に活躍するに違いないと確信できたとか…
それ以外に目を向けると、上記で触れたこの時代の負の側面を凝縮したであろう
逆恨み強欲男も大変印象に残ってる。本作随一の悪役でコイツの登場も
中盤からの登場かつポッと出感が強いが、僅かなシーンでヘイトを
一手に搔き集める立ち振る舞いは古き良きディズニーヴィランを思い出す。
とにかく“話聞かない・疑り深い・強欲・執念深い・逆恨み・被害妄想・暴力的”と
負の要素ごった煮な人間性で、コイツには絶対関わりたくないと言い切れる
絶妙の小悪党ぶりだった---本編に関係ない評価ばかりだと思うだろうが
この悪党の評価は、最近の映画が何かと複雑な事情と悲しい過去を抱える
悪役の増加に世相の変化に理解しつつもやっぱわかりやすい悪党の方が
好きだと再認識できたのと、もう一つは映像業界で働いている身にとって
“出番が遅いうえ登場も短い中でこうも憎らしい悪党を表現した演出力”には
純粋に本作の好意的評価として挙げている…まぁどちらにせよそれ以外での
評価が本作に興奮も感動もしなかった事実には変わりはないが。
でも何だかんだ言いつつもハリソンフォードかっこいい!!てことで。