「好みの分かれ目。これまでとは違うシリアスでドラマチックな『キングスマン』!」キングスマン ファースト・エージェント 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
好みの分かれ目。これまでとは違うシリアスでドラマチックな『キングスマン』!
おはよう、ハリーくん、エグジーくん。
…いや、
おはよう、オックスフォード公、コンラッドくん。初任務を伝える。
第一次世界大戦の裏で、不審な動きがある。“羊飼い”と名乗る謎の男が率いる秘密結社“闇の狂団”が、時の英国王ジョージ5世、ドイツ皇帝ヴィルヘルム2世、ロシア皇帝ニコライ2世を反目させて戦争を長引かせ、世界を破滅させようというのだ。
その目論みを阻止してほしい。
狂団のメンバーは油断ならない。ロシアの怪僧ラスプーチンもその一人。充分気を付けつつ、まずはラスプーチンに接触してくれたまえ。
合わせて今回、“キングスマン”創設秘話の紹介もお願いする。
任務の成功を祈る。
尚、このメッセージは自動的に…(プシュ~)
…という事で、昔ながらと現代センスの斬新ハイブリットが受けた新スパイ映画『キングスマン』の最新第3作目は、昨今の人気シリーズの定番、時代を遡っての“エピソード0”。
あっという間に歴代名スパイに並ぶ人気となった『キングスマン』。ユニークさもさることながら、確かに誕生秘話は気になる。
その歴史は長く、何と今から100年以上前! 第一次世界大戦時。
舞台設定が“第二次”ではなく、“第一次”なのも目新しい。
歴史の長さや創設はMI6とほぼ同じ。ひょっとしたら“キングスマン”は我々が思ってる以上に、深く歴史に介入していたり…?
(とは言いつつ、あくまで“キングスマン”はフィクション組織という事は大前提)
現在は完全な組織体となってるが、この時は“組織”と呼ぶには程遠く。メンバーもほんの3名。
が、手詰まり状態の世界の危機に、自立して行動する。
元軍人にして、英国貴族のオックスフォード公。洗練された英国紳士である事は勿論、自ら実戦もする行動派のリーダー。
前2作のコリン・ファースから何の違和感も無く、レイフ・ファインズがハマり役。
キレッキレ、身体を張ったアクションを披露。ただ命令するだけじゃなく、英国名物スパイの上司だってやる時はやる!
ハリーは紳士&アクションだけじゃなく、ユーモアも魅せてくれた。それはオックスフォード公も。でも、敵の手中にまんまと掛かってのパンツ姿はそこまでする…?(^^;
オックスフォード家の使用人ポリーと執事のショーラは単なる仕え人に非ず。頼もしいメンバー。
彼らは主人が“外”に居る時、すでに“中”に居る有能さ。
ジェマ・アータートンが歯に衣着せぬもの言いと名射撃手。ジャイモン・フンスーは忠実さとキレッキレのアクションを魅せてくれる。
前2作のハリー&エグジーは師弟関係だったが、今回は父子。
戦争への志願や危険な任務も厭わない息子。
戦争や危険な任務に巻き込む事を躊躇する父。
自らの体験で戦争など愚か。また、この父子は最愛の人を失っている。目の前で死んだ妻であり母…。
息子を愛するか故に反対。
師弟より濃い父子のドラマが展開。
敵も前2作の“THEアメリカン”なフィクション組織ではなく、史実や実在の人物絡み。
第一次世界大戦やその引き金になった1914年に起きたオーストリア=ハンガリー帝国皇太子夫妻暗殺事件。
“闇の狂団”のメンバーに、ロシアの革命家レーニン、女スパイのマタ・ハリ、ドイツの預言者ハヌッセン…。歴史を動かした一癖も二癖もある人物らが属している設定が、“歴史”や“陰謀”好きなら面白く、堪らないだろう。(ちなみにEDに登場する“新参者”はアノ独裁者! 登り詰めてメインヴィランとなった続編見てみたい)
中でも圧倒的インパクトを残すは、ロシアの怪僧ラスプーチン!
ちょくちょく映画の題材になる歴史上の怪人物。
その期待に応えたリス・エヴァンスの怪演、ビジュアル。英国人のエヴァンスが何故にロシア人役?…なんて違和感を感じさせないくらい。怪しさだけじゃなく、戦闘スキルも抜群。ロシアンダンシング・アクションは見もの。
これら史実や実在の人物絡めがリアリティーを高め、歴史劇の醍醐味もあり。
お馴染みのキレッキレアクションやユーモアは勿論、シリアスさや重厚さを増し、これまでの『キングスマン』とは一味違う!
…それが好みの分かれ目でもある。
前2作のようは痛快娯楽スパイ活劇を期待すると…。
今回のメインである父子ドラマはいい。
父の反対を押し切って、戦争へ。スケールのある戦争シーンは見応えあり。でも、アレ、『キングスマン』を見たつもりなのに、途中から『1917』でも見てるのかな?…と、思ってしまったり。
その戦争で、息子に悲劇が…。まあ伏せる必要も無いだろう。(一応ネタバレチェック付けるし)
息子の戦死。戦争の愚かさや怒り、争い事の虚しさ…。
父の悲しみ、喪失。息子の思いを汲み、世界の為に何が出来るか。再起。
エモーショナルでそこが本作の肝ではあるが、何だか『キングスマン』じゃないような…?
てっきり父子で活躍するのかと思ったら、息子が途中退場してしまい、これまたアレ…?
それは敵にも言える。てっきりラスプーチンが今回のメインヴィランとして最後まで対するのかと思ったら、こちらも途中退場。最後は必然的に黒幕の“羊飼い”と闘うのだが、ラスプーチンを超えるインパクトや存在感は悲しいかなナシ…。
ずっと顔が見えぬ“羊飼い”。その正体は…? あっと驚くどんでん返しや衝撃や意外性にも欠けた。(実を言うと、アンタ誰だっけ…?と思ってしまった)
アクションは始まれば痛快だが、特にめぼしいアクションが、中盤のvsラスプーチン、クライマックスの飛行機から飛び降りての潜入~断崖絶壁~ラストバトルくらいなのが乏しい。
『1』の“花火”、『2』の人肉パイのようなトリッキーさも無く、もうちょっとふんだんに要素や見せ場が欲しかった気も…。
総じてつまらなくは無く、今回も悪くはなかったが、前2作より面白さや魅力はちと及ばず。
当時の世界背景やある程度歴史に詳しくないと、ちと関係性などがややこしく…。
今回の思い切った作風チェンジは監督マシュー・ヴォーンたっての希望らしいが…。
こちらの“続編”は作られるのか現時点では不明だが、シリーズ自体は続行。次回作では再びハリー&エグジーがカムバックするようで、痛快なエンタメはそちらに期待。
創設秘話やちょっと真面目でドラマチックな『キングスマン』を見れただけでも。
ロシア絡みの戦争話。
タイムリーと言うべきか、嫌でも渦中の問題が頭を過ってしまう。
某人物も実は“闇の狂団”のメンバーで、今この世界を混乱させて、手中に収めようとしたいのか…?
この愚かな軍事侵攻を止めるエージェントや組織は居ないものか…?
私の場合、こんな時にゴルゴ13がいたらなぁ、と思ってしまいました。
でも、映画の頃の時代なら東西二極でしたが、今やアジアのあの超大国抜きでバランスは取れないし…
地球に隕石接近❗️みたいな事態でも起きないとみんなで仲良く力を合わせてってできないのでしょうか?
世界のリーダーがみんな映画好きならもっと世界が良くなるのに‼️
と、本気で思います。