「仕立て屋一味が山羊小屋を襲う」キングスマン ファースト・エージェント Uさんさんの映画レビュー(感想・評価)
仕立て屋一味が山羊小屋を襲う
シリーズ第二作のゴールデン・サークルは観ています。カッコ良いけれど、血はたっぷりとほとばしる。
◉階級世界の裏側で
諜報員たちの第一次世界大戦を回避する戦いが始まり、大戦の白兵戦を挟んで、諜報員と世界制覇の一味の決戦が行われると言う、ストーリー展開。
VSラスプーチン、イギリス軍VSドイツ軍、VSハニートラップのスパイ、山羊小屋決戦のどれもがきめ細かな技の出し合いと、綱渡り感満載で、かつ当たり前のように可笑しさも盛られている。
ラスプーチンの華麗な技は凝り過ぎた功夫ダンスだし、塹壕を出た兵士たちは、お互いに銃は使わずに格闘技でいくぜと、左右に広がって対抗戦を戦う。ハニートラップ諜報員がスカーフを目隠しにしてナイフを突き刺す技は、あれはカムイの「翳」の術ですね。
片角の山羊は、最後は角を折った闇の組織のボスに止めを刺した。
山羊小屋一味のボスはオックスフォード公に対して、上から見下しているお前たち!と憎々しげに叫んだ。だが、そんな罵倒も呑み込んで、高級スーツを着こなす仕立て屋一味が勝鬨!
それにしても、ラスプーチンやレーニン、ヒトラーがいる山羊小屋って、メンバーが凄過ぎる。ファンタジック!
◉キングスマンは熾烈な運命で誕生した
しかし。
予告編で、本作の決めゼリフのように言い放たれた「マナー メイクス ア マン」のフレーズは息子に対してではなく、敵のボスに向けたものだったとは、たまげた。
しかも、しかも、息子が死ぬ筋書きとは、全く予想外。本シリーズで当然のように、若き獅子を一人前にするストーリーを期待した私は、やはり凡庸な人間だったかも。
「オックスフォード」の気高さばかりじゃ命が保たない。スタイリッシュなスーツの下には、残虐を厭わぬ精神と、殺しに長けた強靭な肉体がなきゃ、父のように生き残れないのだった。一方、息子は騎士道精神に則り、戦場に残って命を落とした。
それでも驚きの後に、カクッと肩の力が抜けたのは事実です。
妻と息子の二つの命と引き換えに、鋼鉄の秘密諜報機関は生まれたと言う、強烈な定義づけの物語。
ところで、マグリットが描いたような闇の組織の砦は美しくシュールでした。物資の搬入や兵員の移動を考えると、戦術的にはあそこまで高い場所に城砦は築かないと思いますが、それがまた、この作品のぶっ飛び感を高めたと言うことで。