「モータースポーツファンから見たレビュー」フォードvsフェラーリ トウキヨウわんだらーさんの映画レビュー(感想・評価)
モータースポーツファンから見たレビュー
某BESTIAにて観賞。結論から申し上げますと、大変すばらしい映画でした。以下、映画ファンとモータースポーツファンの二点からの感想を述べます。
まず、この映画は非常に完成度の高いものです。ストーリーの起伏により二時間半という上映時間があっという間に過ぎ去っていく映画でした。また、映像と音響が見事にシンクロしたレースシーンの迫力は実物に迫るもので、これこそ映画館で観賞すべき作品であると言えます。過去にもル・マンを描いた映画には、かのマックィーンの『栄光のル・マン』がございますが、こちらはあまりにもレースを忠実に描き切ってしまい、決して万人に受け入れられる作品ではありませんでした。一方、この作品はより人間ドラマの部分へフォーカスをしながらも、決してモータースポーツの姿を描くことをおろそかにせず、二つを非常にうまく融合させた作品でありました。
次に、いちモタスポファンとしての感想です。私は『フォードvsフェラーリ』は単にレースだけを描いた映画ではないように感じます。物語の終盤、主人公のケン・マイルズは譲歩し3台同時ゴールを演出しますが、これこそがモータースポーツというものを象徴しているのではないでしょうか。確かに、いちレースに注目すれば、モータースポーツはドライバーの個人競技であると言えます。しかし、モータースポーツの勝利とは、その車を作り上げ走らせ続けることに貢献したすべての人間の勝利であります。車の設計から始まり、レース中のタイヤ交換作業、はてはルールブックの解釈まで、そのすべての歯車がかみ合って初めて勝利を手にすることができるのです。この映画でも同じです。誰よりも速く、何より24時間という途方もない時間を走り切ることができる車を作り上げた、それこそがケンにとっての勝利でした。3台同時ゴールはこのことを象徴しており、ケンやキャロル、そして関わった全員にとっての勝利なのです。だからこそ二位と知った直後、ケンがキャロルと肩を組んで「来年も勝てる車を作り上げよう」と言ったのではないかとも思います。将来、さらにレースの奥深さを知ったあとにこの映画をもう一度見たい、そう思える作品でした。
最後に、私の感想の締めとして、このような非常に素晴らしい映画へと仕立て上げてくださった役者や制作者、協力者の方々へ深く感謝申し上げます。また、今はまだ追いつけない場所へ走り去ってしまった方々にも深い敬意を表明いたします。
追伸として、史実においてマクラーレン/エイモン組が優勝となったのは、彼らのミスで追い越してしまったことによるものであり、のちにフォード社もマイルズ/ハルム組を同時優勝とするよう協会へ依頼したが認められなかったということをここに記します。