「ハードSFを装った父子に関する映画」アド・アストラ しふぉんぬさんの映画レビュー(感想・評価)
ハードSFを装った父子に関する映画
ハードSFを期待して見に行き、開始5分で最高潮が訪れ、その後は心拍数が80を上回らない映画でした。
設定、ストーリーともに父子の関係性を描くことが目的となっているご都合主義。ご都合主義が悪いとは言わないが、ちゃんとした設定がない・伝わらないのが問題。また特に宇宙でやる必要のない話だし、なんなら30分くらいのショートショートで規模も地球で出来るようなものなので、2時間ずっとお金のかかったCGを見たい人だけが見に行けばいいと思う。
以下は気になった設定、ストーリーの書き出しなので、ネタバレも辞さない方はご笑覧ください。
・電磁嵐が海王星から発生、地球で共鳴か何かで強力な電波障害を起こしたというが、何らかの地球外生命体もしくは父親による意図的な現象かと思ったら、その理由が全く見当たらない。地球に帰ろうとしたリマ計画の人の反乱でメルトダウンした反物質によるサージがそういった電波障害をたまたま地球に起こったってもう少し詰めて欲しい。
・月にいた略奪者はストーリー上必要ではない、何が言いたいシーンなのかが不明。人類は文明が進んでも争い合う愚かな生物であるとでもいいたかったのだろうか。
・月から火星に行く途中で救難信号を出した船もストーリー上必要ない。船長が抜けることで主人公が手動による不時着を行うというのは、おそらく主人公の優秀さを示すためのものであると思うが、別にそこまで尺を使ってする必要はないし、普通に船長に助力を求められて答えるのでいいのでは?
・火星から海王星に向けた主人公のメッセージに答えるというもの。後のシーンで説明されるように父親に地球や家族に未練はないため、主人公の息子としてのメッセージでも父親が答える必然性がない。
・主人公は優秀な軍人であるにもかかわらず、命令違反に対する拒否的な反応が見られないので全く優秀さを感じられない。普通に考えて心理検査に通らない状態の人間が離陸直前の宇宙船に無理矢理乗り込んできたら排除されるのは当然だし、それに対する良心の呵責がなさすぎる。地球帰還後も宇宙軍で働いてることを示唆する描写があったけど、命令違反して結果的に三人の同僚を殺しても働けるって宇宙軍のコンプライアンスどうなってるの?
・海王星の宇宙船にて父親と再会。結局、父親は何も見つけられておらず、何ら新事実も出てこない。分かったのは父親は遠くの宇宙に希望を見出して、近くの希望には目を向けていなかったという、最初から分かっていた事実。
・主人公は父親を反面教師に周りの人間を大切にしますと宣言して終わるが、その台詞はケフェウス号で死んだ三人の乗組員の家族の前で言ってみろ。