劇場公開日 2019年4月26日

  • 予告編を見る

「ファンタジーの中で力の無い主人公はどう動くのか」バースデー・ワンダーランド サイレンスさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ファンタジーの中で力の無い主人公はどう動くのか

2019年4月29日
Androidアプリから投稿

アニメを作るにおいて、
他ジャンルと比べてかなり難しいと
言われるのが「ファンタジー」。
世界観の構築を一から行うという
芸術にも似た難易度の高い創作を
今作は見事にこなしている。
しかし、この作品はそこら辺の
ファンタジー作品とはモノが違う。

この話がよくあるファンタジーと違うのは
「主人公が何の力も持たない」という点。
ファンタジー主人公といえば何かの力を授かったり、主人公が派手に動き回るのが当たり前。
そうしないと主人公をファンタジーという
派手な世界に放り込んだ意味がないからだ。

しかし、この作品にはそれがない。
特別な役職を授かりながらも特殊な能力はなにひとつ持たず、活発に動く事もない。
それは主人公があくまで
「こちらの世界の住人」だからだ。
あちらの世界に心が冒されないままに冒険していき、
全ての問題が解決した後も
こちらの世界に戻る事を躊躇わない、
しかしあちらの世界を去る頃には
しっかりと成長しているという
今までのファンタジー作品とは
明らかに一線を画す作品だと思います。

しかし、今作の評価が高くないのを
見てもわかる事だが、
万人受けはしない作品だとも感じた。
現代のいわゆる「ウケる作品」は
もっと単純でわかりやすくて、
見終わった後に何の謎も残らない作品が
好まれているからだと思う。

この映画を鑑賞してモヤモヤした
気持ちを抱いた人は
ラジオで原監督や松岡茉優さんの
この作品に抱く思いを聞くと
そのモヤモヤは解決すると想います。

そしてクライマックスのあるシーン、
あれは最高としか言いようがない。
今までに体感した事がない、
新しい感動を教えてくれるあのシーンを
見るだけでも映画代を払う価値がある。
どこのシーンの事を言っているかは見れば必ずわかります。

この作品が評価される事を祈ります。

サイレンス