「分かりやすい勧善懲悪に不思議な安心感。」小さい魔女とワルプルギスの夜 天秤座ルネッサンスさんの映画レビュー(感想・評価)
分かりやすい勧善懲悪に不思議な安心感。
言ってしまえばなんとなく時間が余ったので観ただけだった。しかし、このところ重いテーマの映画ばかり観ていたことも手伝って、この良い意味での「簡単さ」に安心感を覚えてしまった。
粗を探して意地悪なことを言おうと思えばいくらでも出来そうなところだし、ストーリーや内容的な部分でいえばまったく大したことのないものであることは否めない。しかしながら次第にこのなんとも分かりやすい勧善懲悪が無性に居心地がよくなって心落ち着いていた。悪役は分かりやすく意地悪で尚且つ滑稽でもあるから躊躇いなく安心して憎んでいいという単純な世界。悪い魔女がしっぺ返しを喰らうことに胸を痛めなくていい世界の分かりやすさ。白と黒が入り混じった現実を生きて、善と悪が入り混じったような映画ばかり観ていた中で、この明白さがやさしかった。「そうだ、たまにはこういう映画も観なくちゃ」ってそう思わせてくれるような映画だった。
そして「こういう映画」はやっぱり、最新CGIテクノロジーを駆使した大作映画で・・・というのとは話が別。この映画ももちろんCGIを使って魔法を演出しているけれど、どこかに手作り感が残っていて、そこが寧ろこの映画のチャーミングさ。ヒロインが住む家の美術の可愛らしさも纏っている衣装のキュートさも、一つ一つ手作りのような温もりがあって素敵だった。
出来不出来を問われると必ずしも出来が良い映画ではないけれど、好感の持てる作品だと思った。
ただどうしても気になったのはヒロインのキャスティング。女優さんの年齢のことをとやかく言うのは如何かとも思うけれども、小さい魔女はもう少し若い女優というか、寧ろ子役さんくらいでちょうどよかったのでは?と、実は予告編の段階からずっと思っていた。演技がどうこうというわけではないので、観ているうちに年齢的な部分はさほど気にならなくなったものの(どっちみち127歳の設定なのだし)、しばらくはなんとなく違和感があった。