「白と黒の濃淡がとにかく美しい」SHADOW 影武者 天秤座ルネッサンスさんの映画レビュー(感想・評価)
白と黒の濃淡がとにかく美しい
まるで水墨画のような白黒の濃淡が美しい映像と、チャン・イーモウらしいアクションシーンの美学を堪能。アクション映画は本来ちょっと苦手なのだけれど、「HERO」「LOVERS」を撮ったチャン・イーモウの映画なら見たいと思わせてくれるし、東洋の美しさを映像に打ち出してくれるので、東洋人として誇らしく思えてくる。本当に綺麗。
一方、三国志をベースにしているというストーリーに関しては、内容がすごく漫画的に思えてしまって、三国志に詳しくないので比較はしないが、ストーリーが撮りたい映像と撮りたいアクションシーンの二の次に回されている感じが否めなかった。クライマックスとも言える終盤のアクションシーンの盛り上がりも、登場人物それぞれの思いが沸点に達するところまで描ききれないままの状態で始まってしまったような感じがあり、こちらとしての思いが乗り切らないような気もしてしまったし、同時進行で複数箇所でのアクションシーンを描くストーリー展開というか演出になっていたので、ひとつひとつのアクションが切り刻まれて都度呼吸が途切れてしまうなという感じもした(同時進行ゆえの緊張感やスピード感や視覚的な華やぎはあったかもしれないけれど)。
なのであまりストーリーが残る作品ではなかったけれど、とにかく映像だけは本当に美しくて終始魅了され続けて、結果もうそれで十分なのではないか?と思うほどだった。
個人的にチャン・イーモウにはラブストーリーが似合うと思う。アクションとラブストーリーが絡み合う瞬間の「きゅん」な感じが、チャン・イーモウ作品を愛してしまう個人的な理由かもしれないと思う。あくまで個人的だが。