「墨絵の大チャンバラ!」SHADOW 影武者 komacさんの映画レビュー(感想・評価)
墨絵の大チャンバラ!
彩度を押さえた映像とほとんど色味のない衣装や美術で、水墨画の世界を展開。隅々まで行き届いた美意識が感じられ、雨粒ひとつひとつまでが非常に美しい。
二転三転の何が(誰が)真実かわからない物語にも引き込まれる。都督の妻小艾と王の妹青萍の美しさも特筆もの。小艾の影武者への秘めた激しい愛、青萍の矜持を保とうとする激情、どちらも生々しい。
後半の剣劇場面は押さえた色調とは正反対の外連味たっぷりで、一気に盛り上がる。舞踏のように美しい活劇が血まみれの死闘へと一変し、戦いの愚かしさと権力者の醜悪さをえぐり出す様は見事。
領土争いと権力闘争の不毛さを描いた映画でもあり、今の中国でこの作品を作ることができたというのは、それだけで意味のあることだろう。影武者という虚構がひっくり返る最後は、フェイクだらけの今の世界への強烈な皮肉ともとれる。素晴らしい映画。
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