「第三夫人が杉咲花に見えてしょうがなかった(ちょっと無理があるか)」第三夫人と髪飾り kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
第三夫人が杉咲花に見えてしょうがなかった(ちょっと無理があるか)
19世紀末に実際に監督の曾祖母から聞いた話をもとにしている。イスラム圏やアフリカにしか一夫多妻制はないものだと思っていたのに…こんなところにあった!やはりベトナムでも都会からは離れた地域なのだろう。「絹の里」として大規模に養蚕を営んでいるようだけど、一つのコミュニティとして世間とは距離を置いてる雰囲気が漂っていた。もう一つの王国の中の大奥みたいなものである。
エロチックでもあり、美しく戯れる少女たちの姿。水遊びをしたり、血を流したり、生命の根源である部分を描いていて、会話も少ないために別世界に入り込んだような気分にさせられた。まずは卵黄攻撃。『ナインハーフ』の氷を卵黄に変えただけのような気もするが、旦那の方の勢力増進にも役立てたのであろう。そして鶏を捌くシーンにて、生のための食物連鎖までをも想起させられるのだ。
事件がなければ何も面白くない作品なのだが、第一夫人の息子ソンと第二夫人の密通により義務的なセックス以外を愉しむ大人の事情が浮き彫りになる。いや、待てよ。その間、第一夫人と第三夫人は身重なのだから、旦那の相手をする頻度が増えてるはずなのに…ソンの性欲が凄かったのか?それにしても女だらけの使用人には手を付けなかったのか?仮に子供が出来たとしたら義兄弟でもあり親子でもありという、ややこしい関係になるんだぞ!と、やはり頭の悪そうな下半身男だったのか。鞭叩きの上、追放されてもよかったのに。
もう一つの事件は可哀そうだった。その下半身男に嫁いできた女の子。第二夫人が好きすぎるために、一切手を出さずに、離婚問題にまで発展する。しかし、風習により離婚させるわけにはいかないこととなり、それを苦に女の子は自殺してしまうのだ。跡継ぎが誕生するのに死人をだすわけにはいかない。牛が死にそうだったので、わざわざ死を早めてしまう措置をするなどしていたのに、すべてはこの下半身バカ息子が台無しにしてしまったのだ。
溝口健二の『赤線地帯』を観たばかりだったので、こうした妾に対しても地主側が金を払ってるのかと思いきや、多額の持参金を持たせていることに驚いた。閉鎖的なコミュニティってのも生と死の問題がいっぱいあるものなんですね…