「ジャーナリズム批評、戦争批評ではない。観客、つまり、お前らが批評されてんだZO!」プライベート・ウォー tさんの映画レビュー(感想・評価)
ジャーナリズム批評、戦争批評ではない。観客、つまり、お前らが批評されてんだZO!
戦場ジャーナリスト、メリー・コルビンの伝記映画。映画のテンポが速く、観客を飽きさせないように、エンターテインメント寄り。グロシーンもなく、戦場シーンもそんなに怖くない。ただし、そのせいで、この映画からは軽い印象を受けてしまいます。まあ仕方ないか。
この映画の特筆すべき点は、「戦争に行きすぎてPTSDになって、それが彼女にとっての不幸だった。」とか「現在のジャーナリズムに一石を投じる!」と主張していないところ。そうじゃないの。この映画にあるのは、そんなありきたりなメッセージではありません。我々観客に対する明確で鋭い社会的メッセージがあるのです。
この社会的メッセージとは、先進国に住む一般人に対する批判。つまり、我々観客のことを批判してる(笑)。ジャーナリズム批評、戦争批評ではない(これらも含まれてると思いますが、主ではない)。
映画に登場する(1)メリー・コルビンの元夫との関係の描き方(2)映像編集の仕方から、それは感じ取れる。
映画の中では、メリー・コルビンの元夫が凄く糞悪い男として描かれている(結構脚色したんちゃうかな?)。このクソ男、彼女への共感も尊敬も全くない。彼女から浮気のことを問われると、「お前が戦場から帰ってこないから、僕ちゃん寂しいから、他に女作って当然だろ!」みたいなこと言い出す始末。クソでしょ?www。それだけじゃなくて、彼女が「子供を作りたい」と伝えると、このクソ男は「お前、むかし流産してるし、もう歳だから無理」みたいなことを平気で言い出す。うーん。虫も殺さないような顔して、よくそんな残酷なこと言えるね。てゆーか・・・こいつアホなの?
この映画、ロンドンと戦場のシーンが交互に繰り返される。明らかに、ロンドンと戦場の人間を対比してる。製作者の意図は「戦場にいる奴らも酷いけどさ。ロンドンにいるヒルのような奴らも酷くね?」と、思わせること。ロンドンにいる彼女の友達は、皆、人間味のないクソ男、クソ女ばかり。この辺りの描き方がうまかった。多分、観てる人は、自分たちが批判されるべき対象にあるとは、そんなに意識しない。しかし、この映画の真の主張は、先進国の中産階級に対する批判。
映画の中で彼女が言うセリフが印象的。
「世界中に飢えている子供たちがいるのに、私たちは痩せるためにトレーニングジムに行く。」
皮肉が効いている、とても好きなセリフです。
追伸
あのさー。ちゃんと映画みようぜwww。「苦しみは全てが終わった後に来る」の真の意味は「戦場から帰って来て、アホ面下げてるお前ら見てると吐き気がしてくる。だから私は苦しい。」ということでしょうが。