「ポスター」クワイエット・ボーイ toukyoutonbiさんの映画レビュー(感想・評価)
ポスター
ポスターの煽り文見たら怪奇ものと思うでしょ!ミスリード狙ってやってるんだろうけど、本作見れば、あれ?この息子は人間?悪魔?と迷うように出来ている。
内容は行方不明の息子が数年後に発見されて帰ってきたけど、記憶もない。祭りの夜に消えた子供で母親はどうしても自分の子供だと思えないし、行きつけの酒場の男は「僕を殺しに来た」と怯える。
祖父の飼い犬を殺した上に教会で吐く息子、
息子が行方不明になる前から他人と浮気し、精神不安定でリストカットも行う、子供に悪魔の幻覚を見る母、
呑んだくれで、息子殺害の嫌疑を掛けられた町で嫌われ者の父親、
精神不安定な母と、そんな娘に過保護な祖父と陰鬱な雰囲気だ。
演出は積極的に、子供が悪魔であるとミスリードするよう観客に促してくる。
子供が悪魔で、それが見えない父親、実の子供が悪魔になって帰ってきたと怯えて警戒する母、祖父、町の住人というふうに。
真相は息子として警察によって引き渡された子供は全く別の子供だったという結果だ。
酒場の男女三人を問い詰めた父親は、遺体を捨てたらしい穴を見に行くと、自分の子供の死体を発見したわけだ。
①祭りの夜、酔っ払った父親は息子から目を離し、息子トンミは森に入ってしまう
②森小屋で祭りを抜け出した酒場の男女が盛り上がっていたが、それをトンミに見られて一人が追いかける。その途中で子供を転倒させ気絶させてしまう。ここで殺したと勘違い。一旦森小屋に一人逃げ帰る。実際は気絶しただけで、自分の足でトンミは自宅へ帰った。
③帰宅したトンミは、睡眠剤を服用して眠っている母親に泣きつくものの、寝ぼけた母に頭を抑えて抱きしめられて窒息死。祖父が死んだトンミに気付き、遺体を森に捨てる。
④子供を追いかけた男が「殺してしまった」と仲間に伝え、三人が現場に行くと子供の遺体が転がっていた。三人は近くの洞穴に子供の遺体を隠した。
⑤母の浮気相手である警察署長は、検査結果をごまかして、他人を息子トンミに仕立て上げた。
⑥なので、子供の死を知っている祖父、酒場の男女三人は取り乱す。祖父は子供を疑い、子供を転倒させて殺したと勘違いした男は「悪魔だ」と恐れる。母親はそもそも精神が錯乱していてまともに話せる状態じゃない。
⑦母親は逮捕。父親は出自不明の子供とこれからも親子として生きていく。
そういう映画だが、誰も彼もどうしようもない。父親が「全員殺すべきだった」というが、事の発端は酒に溺れて楽しみを優先し、結果目を離した自分である。戻ってきた息子が誰であろうが(他が言うように悪魔だろうが)、父親は歓迎するに決まっている。自分の容疑が晴れるのだから。
そんなわけで、実の息子が帰ってきたと言う父親を皆信用しないわけだ。勿論観客も疑うだろう。
だからこの映画は見ていて誰一人として信用ならない。
行方不明の息子を父親に探させながら、実は死体遺棄した祖父。知っているくせに父親を責める場面も合わさって不快だった。
精神不安定な母親。長年浮気をし、息子を殺害した張本人で自覚もないまま(最後はあったんだろうか?虚弱状態だった)、警察に連行される。救いが見えない。
雰囲気は良かった。閑散とした町、冷めきって閉鎖的な人間関係が乾いた演出で描かれている。
けどわざとミスリードするような描写に加えて、「警察側が検査結果をごまかした」は、かなり展開が強引に感じた。
そして最後のおためごかしのように毎日○○人の子供が行方不明になっている、というテロップ。
いやこの映画は行方不明の子供問題についての啓発映画じゃないでしょ。無理に現実を絡めてくるんじゃないよ。