僕たちのラストステージのレビュー・感想・評価
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そのラストには、ずっと浸っていたくなる優しさと温もりがあった
とりたてて秀でた見せ方があるわけではない。むしろそれらは泥臭いくらいの飾り気のなさで、良くも悪くも一時代を築き上げたお笑いコンビの友情を真正面から描き切る。しかも描かれるのは彼らがキラキラと輝いていた全盛期ではなく、旬から遠ざかった衰退期であり困窮期なのだ。
とはいえ、スタッフとキャストは結果的にこの素材の味をそのまま生かし切り、人生の枯れたこの部分を「もっとも人間的な味わいが出た時期」として見事に結実させて見せるのである。
二人の間で何百回も、何千回も繰り返されてきたネタを劇中でも愚直に繰り返して見せることには意味があったのだ。それはルーティーンなどではなく、一回一回が命がけのステージであり、一挙手一投足が友情の結晶。そのことが自ずと伝わってくる脚本は、逆説的に言って、最高に洗練されたつくりであったことに痛いほど気づかされる。この優しい時間と余韻にずっとずっと浸っていたいと思えた。
淡々としていてベタだけど泣ける…
ベタな展開なのだけれど、全体が淡々としていて御涙頂戴じゃないぶん涙を誘う。
長い時間を共有してきたのだというのを感じさせる2人。喧嘩の時にはスタンに怠け者と言われていたけれど、オーリーは最後まで2人で舞台に立つことを選んだ。
後半、スタンの目がずっと涙ぐんでいるように私には見えた。
それにしてもオーケストラボックス付きの喜劇の舞台とは。豪華で羨ましい。
いつの時代も笑いは大切
映画がまだポピュラーでない時代の話。
二人の喜劇は今で言うコントみたいな感じだが今でも十分通用する。
というより言葉がない分、ハートフルで新鮮だ。
チャップリンを思い出した。
主人公二人の絆が素晴らしいし、隠し事をしていたことを謝ったら「知ってたよ」と返しそのときの二人の表情が最高だ。
最初はがら空きの劇場も最後は大きな劇場が満員に。
ちょっとヒヤヒヤの最期の舞台も無事に終了。
色々あった二人の物語もハッピーエンドかな?
生涯最後の舞台となったとエンディングで紹介されたが、本当に二人は仲が良かったのか、悪かったのか?
漫才師のおぼん・こぼんの二人が頭をよぎったわ。
2人はビートルズの「サージェント・ペッパーズ」のジャケットにも載ってるようだ。
まず驚かされるのがジョン・C・ライリーの特殊メイク。汗までかいてるところなんてのも霧吹きしまくりで大変だったろうなぁ・・・実際のローレル&ハーディの映像を見て比べると、やっぱりそっくりに作り上げていた。
病室で脚を吊り上げてるコントや入り口の二つある駅など、どこかで見たことあるな~と感じるのですが、これもまた日本のコメディアンが彼らのコントを参考にしていたのだろう。ドリフターズのコントやカトケンなんてかなり似ている。吉本新喜劇だって似てるかもしれない。
1937年に絶頂期を迎えたコンビ。しかし契約の関係でごたごたしている間に旬が過ぎてしまったのだろうし、戦争の影響もあったのだろう。時代から見放され、テレビの普及の影響も受け、イギリスに渡った彼らの公演には客もまばら。お笑い世界の栄枯盛衰を見た気がした。
とにかく真面目に喧嘩していたも他人から見ればコントになるし、ずっとコンビを組むなかでも本音がぶつかり合うことは少なかったのだろう。オリバー・ハーディが水着コンテストの式場で倒れたことがきっかけとなり、互いを思いやる友情を再確認し、ともに生涯他人とはコンビを組まない固い意志が感じられた。もちろんアイルランドでの歓迎ぶりやステージは感動もの!なお、チャップリンとも組んだことがあると言ってたローレルにも驚き・・・
共に過ごした時間の長さ
かつての人気コメディコンビの晩年を描いたバディもの。
大元を知らなかったので、特別な感慨は無く。人気に陰りの見えたシニアコンビのツアーの行く末を追っていくだけの前半は余り起伏なく、やや退屈に感じた。
相手への不満を抱えながら共に行動していた二人が、不満を吐露して険悪になる辺りから、急速に物語が展開して面白くなってくる。
私には二人が、何だか、お見合い結婚の熟年夫婦のような距離感に見えた。
長年多くの時間を共にくらしてきて、欠点も嫌というほど見える、性格や意見の食い違いもある、煩わしく思う事もある。けれど、相手の好みも努力も知り尽くしていて、信頼し、誰よりも背中を任せられる。
友情でも、ましてや恋愛でもないけれど、共に歩んできた時間が、替わりのきかない、かけがえのないものになるという関係が、確かにあるのだと思った。
先の事を考え、納得して別の人間と組んだのに、いざ舞台に立った時、違う、駄目だと、分かってしまったんだろう。
聞かなくても解るコーヒーの好み、一つベッドに並んで温める冷えた相棒の手、ラストステージで手を取り合って踊るダンスの、舞台に落ちる影法師。そんな、二人の距離感の描き方が、とても好きだと思った。
時の流れは、容赦なく人を置き去りにする。相棒を失った時、絶世を風靡したコンビの片割れは、二人の辿ってきた道を、美しいまま封印する覚悟を決めたのかも知れない。
コンビが終わりを告げても、書かずにいられない創作者の性。それでも、その脚本具現化するのは、彼と自分の二人でなくてはならなかったのだろう。
切っても切れない関係
喧嘩するし気が合わないとまわりに言いながら愚痴りながら、でもずっと長い間コンビを組んできた二人の関係。スタンはオリバーに笑ってもらうために、ずっとネタや映画の脚本を考えてきたんだろうなとわかると、二人のお互いを想う温かい気持ちにじーんときた。奥さん同士の関係の変化も温かい。
禁句(痩せれ)。
地味。恐ろしく地味。何処がクライマックスなのか、測量しなけりゃ分からないくらい平坦な物語。こんなんでポロリんと涙こぼしてる俺もどうかと思うよ、全く。良かった、地味に。
画にはこだわる方なので撮影者のクレジットは必ずチェックしています。ローリー・ローズはぶっ飛びのオーバー・ロード、ヘルフロント、ペットセメタリーなどを撮った人。奥行きの作り方が好きやわぁ。それと風景。最初の宿のヘルっぷり。ロンドンの劇場外のワンショット。画面右隅にチラリと見える、暮れ泥んで行く空の美しさ。ストリートの切れ目から見えるビッグベンのカスミ方。この「隅っこ品質の高さ」が英国魂で好き。インド映画は、この精神を真似たんですかね。この点については、最近の日本映画が一番ダメだと思う。
コントな私生活に色を添える、奥様方の掛け合いも良かったが、二人共にダンナ愛に溢れる良いオンナで真剣に羨ましい。
実在のコンビの歴史を辿ったバディムービーは、何故か三ヶ国合作で98分の短尺もの。気負わずサラサラ流れて行く気の利いたセリフにニヤニヤしたり、ホロリとしたり。愛なんてものは、愛だと言わなければ、何者でも無い感情として流れ去って行く。合計、何年を共にしたかは不明だけど、ハーディーが倒れなければ、二人は互いへの愛情を語る事もなかったであろうよ。でも、俺たち、口に出したりしないよなぁ、普通。と言うか、友達に愛してるだなんて絶対に言わない。どんなに好きでも。一生、そんな事を口に出さずに済みます様に…と祈らずにはおられませんです。真面目に恥ずかし過ぎる。
ずっとコンビで続ける凄さ❗
星🌟🌟🌟最初まったりした展開でウトウトしてしまったのですが…長くコンビを続けるのは簡単そうで実は凄く難しい❗良い時もあれば悪い時もあるそれが良かったのかどうかは人それぞれの判断ですが…コメディータッチの中にもいろいろ考えさせられた作品でした❗
☆☆☆☆ 〝ショー・マスト・ゴー・オン〟 イギリス公演中の2人が、...
☆☆☆☆
〝ショー・マスト・ゴー・オン〟
イギリス公演中の2人が、共に妻をイギリスへと呼んだ夜。スタンの妻イーダ(チョイ役ながら、巨匠プレストン・スタージェスの作品に出たのが自慢)と、オーリー(妻と2人のベッドにて)からこの言葉が出る。
オーリーは貴金属店でも店員から。
「現役だったのですね」と言われた際に…。
「死後硬直はまだしていない」…と口にする。
時代は1953年。既に人気絶頂の頃はとっくに去り。大衆の娯楽は、映画館よりもテレビへと人気は取って替わられている。
あれだけ人気が在ったローレル&ハーディーも、今では(言葉の応酬激しく、漫才に近い)アボット&コステロに完全に人気を奪われていた。
そんな折に2人は。人生一発逆転を狙って、コメディー版ロビンフッドの映画を企画する。
これはもう、四の五の言わずに観て頂くのが最良かと思える作品でした。
ただひたすらスタンとオーリー。この2人の友情に胸を熱くさせられる映画だ!…と、一言だけ言っておきます。
映画史的に、ローレル&ハーディーは。映画のサイレントの時代からトーキーへと移行した、激動の時代を(数多くのサイレントスターが、トーキーへの移行について行けず引退する)生き抜いた、数少ないスターの1つ。
映画の中には。彼ら2人が主演した映画の中で使われて来たギャグが、密かに使われている様で。そんな事は知らなくとも楽しめますが、知っていての鑑賞ならば、更に楽しめるでしょう。
ハリウッド映画が侮れないのは、この様な小品が突如として出現して来るところ。
作品そのものは、単なるプログラムピクチャーに近いのかなあ〜と思えるのですが。世界規模をマーケットにした大作映画にも負けない程の《熱い》作品だと思います。
ところで。ファーストシーンのワンカットの長回し。
アレって、ひょっとしてアルトマン?
2019年5月2日 新宿ピカデリー/スクリーン10
良い時も悪い時もステージの上に
最後にホロッとする感動作だった!
落ち目になってしまった晩年のお笑いコンビが、ステージを重ねていくことで、人気を盛り返していく
ステージを降りてからも、日常会話の中からネタを見つけたり、ネタ合わせをして、場を盛り上げ、お客さんを増やしていく
その「笑い」にかける思いは、ベテランになっても、新人の頃と変わらない
彼らの間には、お互いに見つめ合えばわかる「あうんの呼吸」のようなものがあって、そんな二人の関係は長く連れ添った夫婦のようだった
そんな彼らは「言いたいことを言い合える関係」だからこそ、時にはケンカもするし、他の人に乗り換えようかなと思うことだってある
けれど、やっぱり、代わりになる人はいないから、元サヤへと戻っていくのだ
そんな二人の「いろいろあっても、やっぱり相方が一番!」という間柄を見ていて、いいなぁと思った
そこまで心を許しあえる相手には、なかなか出会えないからだ
そんな風に、裏側では、いろいろあるし、晩年になれば、体調を崩して、とてもステージになど上がれなくなってしまうこともあるけれど、それでも、そんな自分を押し殺して、ステージに上がった彼らはキラキラと輝いていた
そんな彼らの「これぞ天職!」という姿に感動してしまった
彼らは、お客さんを笑わせてこそ、生きられるし、お客さんの笑顔が彼らの栄養剤なのだ
私の隣の席には、外国の人が座っていて、彼らのギャグにずっと笑っていた
そこまで、彼らのギャグを理解できなかったのが残念だけど、彼らの思いには、心が温かくなった作品だった
夢を追う難しさ、友情、そしてなんと言っても人は老いていく、その儚さ...
夢を追う難しさ、友情、そしてなんと言っても人は老いていく、その儚さ。いろんな角度から人生を考えさせられます。
コンビの絆って強いね。
ローレルとハーディ
かっては、満員満席で映画も大ヒット
しかし
時はながれて
いよいよ
ラストが近づいている。
身体も同様だ!
しかしラストまで
舞台に立つという
使命が
命を懸けてまで
やるんだなあ!
駄目だ、これは泣ける
愛と友情と思いやりのパートナーシップにやられた。
ボードビル全盛期に活躍したお笑いコンビの友情と絆が、’30年代と’50年代を舞台に描かれる。
前半は淡々とした語り口で、二人のコントも今の時代ではそれほど笑えぬインパクト。
それでも、8時だよ全員集合の下敷きかと思われるような笑いの形が感じられる。
時代の流れとともに、ショーから映画、そしてテレビに大衆の娯楽は移り変わり、映画の出演さえ難しくなったコンビは、大西洋を渡った英国でのツアーで復活を目指す。
初めはまばらだった観客。しかし、ツアーが進むにつれ英国各地で往年のファンに迎えられる。
やがてお互いの長年のわだかまりが浮き彫りになるが、一人の病気の発症を機に二人の絆が取り戻され、生涯無二の相棒となる。
それぞれの妻との愛情、妻同士の友情、そして二人の友情を越えた愛情。
ドラマの後半は、4人が織りなす思いやりに満ちたパートナーシップを丁寧に描き出し、引き際の美学とともに観るもののハートを静かに徐々に大きく揺さぶっていく。気がつくと、お笑いの場面にもかかわらず、まさかの目から汗が止まらない。
人生の折り返し点を過ぎている自分にとっては、空いた客席と持参のハンカチが有り難かった、平日朝一の鑑賞だった。
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