「灰色の学園で紡がれる、血と硝煙の香りに包まれた少女達の物語」グリザイア:ファントムトリガー THE ANIMATION 灰兎さんの映画レビュー(感想・評価)
灰色の学園で紡がれる、血と硝煙の香りに包まれた少女達の物語
原作プレイ済みです。
とうとう愛しの邑沙季ちゃんが動いてる姿が見れるということで、地方から道内唯一の上映館まで有給を取って観に行きました。
正直なところ、グリザイアファントムトリガーの原作であるPCゲームVerはかなり展開が早く、何度かプレイしてようやくしっかりとストーリーの内容を把握出来る複雑さがあります。
その上、今回の劇場版ではVol1.Vol2の内容を二つとも短い時間に詰め込んでいて、「大丈夫かな?」と思っていました。
——が、まぁ杞憂に終わりました。
無駄のないカットで原作プレイヤーとして見たかったシーンをしっかりと見せてくれて、最低限省くだけに留めしっかりと尺に収めたのは流石と言えます。
Twitterで広報担当さんが何度も上げていたOP『幻想の輪舞』とED『サヨナラの惑星』も最高で、広い空間で曲が流れてるという事実確認だけで泣いてしまいました。
劇場で視聴するにあたって一番良かったと感じたのはやはり音響面でした。
特に殴打の打撃音や拳銃による射撃音のSEはとても重厚感があり、ゾクゾクとさせるような演出だと感じました。
またもちろん内容としても良かった部分は多々ありました。
個人的に一番嬉しかったのは劇中に本来Vol1、Vol2では登場しないはずのキャラクター、千石大河やシルヴィア、ベルベットなどが登場したことです。
内容はそこまで伸ばせないにしても、動いてる彼女たちを映すことで、
「あぁ、彼女たちもしっかりと生きてて、この世界はほんとうに存在しているんだ」
と感じさせてもらい、胸が熱くなりました。
もう一点、原作では細かく描画されなかったシーンの収録です。
もっとも印象的なのはやはり、レナとマキ、シックスとバックスが出会うコーヒーショップの前でのシーンです。
原作では「あんたがコーヒーショップのゴミ箱を漁ってて、縄張り荒らしとしてボコられてたんだよねー」とレナがバックスの名前の由来を説明する際の細かな設定でしたが、
そこが描画されることによってシックスが大人たちからバックスを守ってあげてる優しさが見られてホッとしました。
何点か気になった点を挙げます。
気になった部分は正直、全て「やはり時間が足りなかった」という度し難い課題が残る問題なので、「まぁ、仕方ないかな」と思っているのが大半です。
例えば原作と大きく相違してる点としては『最序盤、冒頭でムラサキが犯人を追いかけているシーンでクリスとタナトスが連絡を取っているシーンが描画されている』、『レナがハルトに抱きつく場面が根本的に変わっている(射撃訓練場でそれはさすがに山本さんに怒られない?)』、『ハルトが有坂先生には少女に見えたというシーンの撤廃(声が当てられた関係?)』などなど。いずれも仕方ないのかなとは思います。
タナトスの件に関しては個人的に「誰と喋ってるんだ?」という疑問が残る伏線にしておいて、後からその正体が明かされることで前シリーズからのプレイヤーを沸かせる演出といった趣があって好きでした。
メタ的な視点で見ると前シリーズからの視聴者はほとんどプレイ済みなので劇場版ではその効果を重く見ずに早めから惹きにいったのかなとも考えられますね。
反対に、一番どうしようもなく残念に感じたのは二部のクライマックスシーン。
マキが美浜学園に身柄を拘束され、その処分をハルトが任せられたシーン。
端的に言ってしまえば、『落ちるの早すぎ!!!!!』の一言に尽きますね。
もちろん尺の都合なのは理解しているのですが、初見の視聴者からすると「マキちょろくない?」と思われても仕方の無い場面かと思います。原作ではハルトの飄々とした中に垣間見える強引さから半ば無理やりマキを引き取った感じがあって、その方がしっくりときました。
それだけ、「マスター」と「所有物」という主従関係は強固なものであるはずなので、今後のレナのハルトへの愛と忠誠が軽んじて見えてしまうことにも繋がるかと思いました。
と、まぁ若干ながら不満な点——というよりは不安な点?がいくつかありましたが、総評としては大満足でした。
大きな作画崩壊もなく、圧倒的スケールで見たいものが観られたという余韻に浸っております。
滞在日程の都合上、私は一度しか劇場に訪れることは叶いませんでしたが、ブルーレイなどが発売されるのであれば絶対に買おうと思えるようなクオリティでした。
Vol3以降も期待したいと思います。