劇場公開日 2020年1月31日

  • 予告編を見る

「AI暴走に対する主人公の答えが素晴らしい」AI崩壊 しふぉんぬさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0AI暴走に対する主人公の答えが素晴らしい

2020年2月1日
iPhoneアプリから投稿

今作は結構評価が割れると思う。逃亡劇は中年のおじさんが逃れるようなものでないにもかかわらず逃切れる警察の無能さであったり、AI暴走に関しては誰が犯人かは容易に想像できる上にその動機もありきたりだとは思う。

一方で学習することを覚えた、もはや枷が外れて制御できないAIを止める手段がとても素晴らしい。改良や機能停止、初期化などではなく、なぜAI「のぞみ」が作られたのか、何を望まれて生まれたのか、そういったアイデンティティを確立させること。それが暴走を止める唯一の手段であるというセンスが素晴らしい。実際、暴走を止めて正常に戻ったと思われた「のぞみ」はそれまでの古い電子音のような声から、まるで(桐生のぞみのような)肉声へと変化しており、これは「のぞみ」がもはやただのAIではなく、意志を持ち、学習し、進化し続けるAIへとなったことを示唆している。これは後の桜庭の独白からも真実であると示唆されている。

「のぞみ」はもはやAIではなく、それを越える存在となった。それを踏まえると、最後の記者とのやり取りの後の桐生の「親が子を幸せにできるか」というセリフは、正しい知識を持ち、正しい判断をすること、それが大切なのであり、そうすることで確実に世の中を良くしていけると信じている彼の思想を示していると思う。

また、桐生夫妻や浩介と悟、浩介と心といった家族の関係性も非常に良く、とても素直に感情移入できると思う。特に心の「父さん、汗臭い」というセリフにはみなさん心温まるものを感じたんじゃないでしょうか。

より悟や桜庭の深掘りするようなストーリーがあると良かったと思うが、映画という限られた枠でこれだけのストーリーを破綻なくまとめているのは高く評価すべきだと思う。

mcxxi