「記憶屋にこの映画を見た記憶を消して欲しいとまでは言わないけども…」記憶屋 あなたを忘れない 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
記憶屋にこの映画を見た記憶を消して欲しいとまでは言わないけども…
私も記憶屋に記憶を消されたんじゃないかと思う時がある。
あれ、この映画や俳優の名前が思い出せない…。
まあ、それは単に私の記憶力低下のせいであって…。
そんな事はどーでもよく、作品の方は、
年上の恋人・杏子にプロポーズした直後、突然フラれた遼一。厳密に言うと、遼一の事だけ覚えていない。
杏子は都市伝説の“記憶屋”に記憶を消されたのでは…?
大学OBの弁護士の高原や幼馴染みの真希と共に、記憶屋を探し杏子の記憶を取り戻そうとする…。
同じ山田涼介なら『ナミヤ雑貨店の奇蹟』、
同じ平川雄一朗監督作なら『ツナグ』。
それら系統のファンタジー/ミステリー/ヒューマン/感動。
良質作ではあるが、良くも悪くも邦画らしいというか…。
記憶屋はただの都市伝説か? それとも…?
話が進むにつれ、身近におり、尚且つ誰だか察しが付いてしまう。
15年前に広島で起きた遼一と真希も関わった事件。もっと大きく関わるのかと思いきや、小匙程度。
杏子と同じく記憶を消された高校生カップル。こちらは小匙半分程度。
遂に判明した記憶屋の正体。
杏子が記憶を消された理由。
他謎も回収されていくが…、
う~ん…。
キャスト陣に関しては、
山田涼介は巧い。広島の老人ホームで田中泯演じる真希の祖父に謝罪するシーンで流した涙にグッとさせられた。
佐々木蔵之介はユーモアや人情もある弁護士を好演。
芳根京子みたいな明るい幼馴染みなんか居たら理想だが、ちょっとウザい。私的には蓮佛美沙子のような恋人の方がタイプである。
世の中、不条理な事ばかり。
記憶屋はそんな苦しみから人を助ける為に存在する。
しかし、それもまた苦しみ。
この世の中には苦しみだらけ。
それを一人で背負う。どれほどの重荷だったか。
記憶は幸せな思い出だけではなく、全てを消し去りたいものも。
どうしようもなく苦しめられ、誰にも助けを求められない。
そんな時知ったのが、記憶屋。
記憶屋にとってもその相手がまさかの…。
人々の苦しい記憶と立ち会ってきた中で、つい魔が差してしまった“片想い”…。
不条理や罪。
本作はそれへの許し。
遼一は記憶屋を許せるか…?
幸せであれ、苦しみであれ、全て覚えていてこその記憶。
テーマ的には訴えるものがある。
しかし、作品的には展開も読め、あざとく涙も誘い、記憶屋の動機もちとワガママ。
ご都合主義のステレオタイプの邦画の先述通りの良くも悪くも典型。
こちらもいずれは記憶屋に記憶を消されたように内容を…となるかもしれない。