劇場公開日 2019年11月22日

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「討ち入り場面のない「忠臣蔵」の是非で評価が分かれそう!?」決算!忠臣蔵 HALU6700さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5討ち入り場面のない「忠臣蔵」の是非で評価が分かれそう!?

2019年11月23日
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鑑賞方法:映画館

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年老いた父親のリクエストにて、イオンシネマ草津で公開初日に鑑賞。
吉本興業と松竹によるコメディタッチの時代劇。今回は、御家断絶となった直後からの旧浅野赤穂藩の討ち入りに至るまでの台所事情に焦点を当てたお話。
コメディタッチの時代劇という体裁ではありながら、ちゃんとれっきとした、原作があり、それも小説ではなく新書本。東京大学教授・山本博文氏による『「忠臣蔵」の決算書』(新潮新書刊)。江戸時代研究の第一人者が、大石内蔵助が実際に残した決算書を基に、討ち入り計画の実像を記した研究書籍を、今回、中村義洋監督が自ら脚本も手掛け、今までに誰も観た事のない「本当の忠臣蔵」として描いています。
誰もが知る忠臣蔵の、誰にも言えないお金の事情を描いている点で、異色作であり、それをいつでも何処でも、おそばは1杯16文=現代のおそばは約480円として、と言うことは銭1文は30円として現代の金額に換算し、お話を進行していきます。

江戸城松之廊下の刃傷事件により、通常であれば喧嘩両成敗となるはずが、幕府が下した結論は、赤穂藩の御取り潰しと、藩主・浅野内匠頭(阿部サダヲさん)の即日切腹。吉良上野介へはお咎めなし。突然藩主を亡くした事で、浅野家の御家は断絶、藩士たちは路頭に迷うことになります。

筆頭家老・大石内蔵助(堤真一さん)は嘆く間もなく、浅野家復興を願い出て、ひたすら残務整理に励む日々。
しかし、御家再興にも当然、お金が必要。
大石内蔵助は、幼馴染みの勘定方・矢頭長助(岡村隆史さん)の力を借りて、亡き主君の妻・瑤泉院(石原さとみさん)の化粧料(嫁入りの際の持参金)をかき集めます。
その金額は、およそ800両(9500万円)。
しかし、金の使い方が分からない大石内蔵助は、矢頭長助らの助言も聞かず、行き当たりばったりの大盤振る舞い。お金はどんどん減っていきます。
一方、浪人となった藩士たちは、宿敵・吉良への仇討ちを勝手に計画。
加えて、江戸の庶民たちまでもが、赤穂浪士たちによる仇討ちを熱望する始末。
やがて、大金をはたいた甲斐もなく、御家再興は幕府の決定であっさり却下。
「なんでやねん。」
ようやく討ち入りを決意したものの、もはや予算残高は微々たるものに・・・。

果たして彼らは「予算内」で、一大プロジェクトの「仇討ち」を無事に「決算」することが出来るのか!?
といったお話の展開ですが、劇中に、この予算残高を、画面上に金額表示でズバリ現在の残高や個々の経費を数値化して示しているのがとても面白く、残高メーターが大幅にマイナスへと振れ動いていく様子からも笑いを誘ってくれます。

多くの吉本興業所属や大人計画所属のタレントさんらが扮する藩士たちのコミカルな演技が楽しい作風の反面、あくまでも、従来からの四十七士が殿のために忠誠を尽くし仇討ちを果たすまでの「忠臣蔵」のお話を大まかにでも知っていることを大前提として、その「忠臣蔵」に要したお金のお話にのみ焦点を当てたシビアな内容のため、先ず、吉良上野介自体も登場せず、また、肝心の討ち入りシーンもないという前代未聞の「忠臣蔵」映画でしたので、この点で、この作品に対する評価も大きく二分されるかも知れないですね。

「決算!忠臣蔵」という映画の内容から、肝心の見せ場であり醍醐味であるはずの討ち入りシーンがないのも、私は、予算削減を図っての事かも知れないと思ったくらいです(笑)。

従来の作品では、標準語による忠臣蔵作品が多い中、今作では、江戸詰勤番藩士たちは除き、赤穂藩士役の俳優陣はいずれも関西弁を話すという設定も良かったですね。

ただ、私も、今作に、見せ場である討ち入り場面がない点で、面白味が半減して勿体ない気もしましたね。
また、赤穂浪士の参謀的役割の菅谷半之丞役に妻夫木聡さん。或いは不破数右衛門役に横山裕さんなどの配役は良いですが、剣豪の堀部安兵衛役に荒川良々さんはかなりイメージが違いましたね(笑)。

私的な評価としましては、
一見、コメディタッチの時代劇ではありますが、元浅野赤穂藩の討ち入りまでの台所事情に特化して焦点を当てた真面目な作品で、大石内蔵助自身が実際にお金の使い方がよく分からない人物であったという史実だからこそ面白いのですが、従来のようなチャンバラの討ち入りの大きな見せ場がある本格的な時代劇としての忠臣蔵作品を期待してしまうと、ちょっとガッカリするかも知れないですね。
私個人的にも、討ち入りまでの過程をお金の使い方から見つめ直した今作は、着眼点からも、コレはこれで面白かったのですが、やはり大の見せ場の討ち入り場面が一切ないと言うのは、面白味が半減してしまって非常に残念ではありましたね。
従いまして、五つ星評価的には、三つ星半の★★★☆(3.5点)くらいの評価が相応しいと思いました次第です。

※尚、この「決算!忠臣蔵」の映画内では当時の専門用語が飛び交っていましたが、それらに対して詳しい説明もなくドラマが進行していきましたので、50頁に亘る詳細な内容が収録された税込価格八百円のパンフレットをご購入されて知識を補完されることをお勧め致します。
忠臣蔵に慣れ親しんだ今年52歳になる私でも重宝しました。

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HALU