「刑事とポン引きが、傘を差しながら追いかけっこ・・・かなりシュール。」天気の子 よしさんの映画レビュー(感想・評価)
刑事とポン引きが、傘を差しながら追いかけっこ・・・かなりシュール。
家出した少年が、晴れを呼ぶ不思議な少女と出会うことで起こる不思議な物語。
比較的マニアックな作品が多かった新海監督が、マスを意識(?)して製作した「君の名は。」の世界観を引き継いだ秀作です。
まず、映像の美しさは流石です。本作では、特に美術背景に驚かされます。陰鬱な曇り空がはけて降り注ぐ太陽の光。幻想的で素晴らしいシーンの連続で、「すーげぇ」「わー、きれい」「なんか、涙出るね」ってセリフを、私も思わず呟きたくなります。
また、個人的には代々木、新宿、池袋、そして田端と、比較的知っている街並みが多く出たことも好印象でしたし、その再現性の高さに驚かされました。
ストーリー展開も、名シーンの連続です。中盤にある「夏美と取材に走り回るシーン」「3人が晴れ女活動をするシーン」。軽快なBGMと相まって、楽しい気分にさせてくれます。
後半、行く当てを失い、彷徨う少年少女の息苦しくなるような絶望的なシーン。その描写が強烈なだけに、その後のホテルの楽し気なシーンが強く印象に残ります。そして、その楽し気なシーンがあっただけに、その後の展開が・・・・。
明と暗の強烈なコントラスが秀逸な見事なストーリー展開でした。
ただ、高い評価はし難い映画だとも感じます。
一番の理由は、『浅い』ことでしょうか?
「天気が乱れた理由は?」、「巫女とは?人柱とは?」、「ビルにある神社とは?」。気象神社の神主からそれらしい話が少し出ますが、それだけ。
帆高は何故家出をしたのかも語られず、陽菜が行政の庇護を頑なに拒んだ理由も分かりません(施設に送られるからと言って、姉弟が引き離されるわけではない)
特に主人公二人の中途半端な描写は、彼等に対する共感を難しくした印象で、とても残念に思います。
ストーリーで言えば、クライマックスでの圭介の言動も、それ迄の流れをぶった切った印象で、興ざめすら感じました。
最後に、声優陣について。
大規模なオーディションを勝ち抜いただけあって、主人公二人の演技は素晴らしかったですね。小栗旬も、キャラのイメージにあった流石の演技で感心しました。
気になったのは本田翼と平泉成。本田は所々で気になる程度でしたが、平泉は重要なシーンであの棒読みは残念です。集客が期待出来る方でもないはずですから、素直にベテランの声優の方に依頼すべできだったと思います。
私的評価は、少し甘めの4にしました。