「一見地味な設定を補って余りある映像美と不動の地位を得た「新海誠」というブランド力」天気の子 オレさんの映画レビュー(感想・評価)
一見地味な設定を補って余りある映像美と不動の地位を得た「新海誠」というブランド力
離島から家出してきた高校1年生の森嶋帆高は大都会東京での文無し宿無し生活に困窮し、フェリーで知り合った雑誌寄稿の零細企業を経営する須賀啓介を頼り、住み込み食事付きの記者アシスタント生活を送っていた。
ある日「100%の晴れ女」という都市伝説的な噂を調べる取材の中で知り合った14歳の少女、天野陽菜が「祈るだけで周囲を晴れにする」能力を持った晴れ女の正体と知る。
夢のような力とその代償を受けることになった穂高と陽菜の2人を描く、「君の名は。」に続く新海誠監督によるアニメーション作品。
空前の大ヒットとなった「君の名は。」から約3年ぶりの新海誠監督の新作。
おなじみとなった色彩豊かな世界観や独創的な設定で多くのファンを魅了し、「君の名は。」には及ばずも2019年国内興行収入堂々の第1位に輝くなど「新海誠」のブランド力をより強固なモノにし不動の地位を獲得した作品。
「祈るだけで周囲を晴れにする」という一見地味な設定に当初は感じたが、キャラクターの魅力(夏美さん大好き)、「晴れ女」の能力の裏に隠された代償などでうまくストーリーを脚色し、離島から家出した少年帆高や実の母親を亡くした陽菜とその弟の凪などの過酷で孤独な環境を強いられた子供たちを優しく助ける者、犯罪者として追う過激な警察などの大人たちとの対比が特徴的な演出と感じた。
特に意味深な仕草や行動に謎めいたモノを感じる圭介の魅力が大きく、帆高と陽菜の関係が事故死した妻の明日香と自分の過去と同じ境遇だったのではないか、つまり妻の明日香も晴れ女で彼女を亡くした理由は事故死ではなく、人柱として生贄になったのではないかとの推測が飛び交い、より彼の孤独や世捨て人然とした振る舞いに哀愁を感じ、作品内随一のキーパーソンとして人気のようだ。
上記はファンメイドのストーリーではあるが、キャラクターの設定として非常に魅力的だし、悩みぬいた末の圭介の終盤の行動に感動した人も多いと思う。
そして新海誠作品でおなじみの実在の場所をモチーフにしたいわゆる「聖地」演出も健在でかつては新宿御苑や代々木を舞台にしていたが、今作はなんとJR田端駅の線路沿いの坂というなんとも絶妙なロケーションを採用している。
学生時代に通ったことのあるどうみてもただの坂と思っていた場所が見方を変え、演出を加えることでこんなにも魅力的な場所に見えるのかとその手腕に恐れ入りました笑。
さらにおなじみ(らしい)過去作品のキャラクターの登場に「君の名は。」の滝と三葉がサプライズで登場しファンを沸かした。
細かく調べると前作との時間軸的な面で矛盾が生じるそうだが、新海誠が「再開する前の2人を観たかった」とのことで登場させるに至ったらしく、完全に「新海誠ユニバース」と化していて何でもありだがうれしい演出と感じた。
瞬く間にアニメーション映画界のトップに躍り出た印象の新海誠監督。
どれもオリジナル作品として世に送りだしているようでなおのこと素晴らしい才能と感じた。
まだまだ若い監督なので、今後もますます期待をして次作を待ちたいと思う。