劇場公開日 2019年7月19日

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「あなたの望むように生きなさい」天気の子 knzkさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5あなたの望むように生きなさい

2019年11月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

「世界のために、みんなのために」と自己犠牲へと向かう主人公の物語は悲しくも感動を呼ぶが、この映画の主人公はそれを選ばない。
そこに、この映画のメッセージが込められているように思います。
主人公の選択を自己中心的な若者の決断と見てしまってはこの映画のメッセージに気付けないのではないでしょうか。
直接的に映画の中で描かれてはいないため、わかりにくくなっているが、須賀さんと穂高の対比から伝えようと試みているのだろう。
自身が望むものが周りを犠牲にしたり、不幸にしたりする選択であったとしても、それを選択したいと思うことは悪いことではない。
個人的には新海監督から、わたしたち大人に「世界のため、みんなのためとか自分たちに都合のいい武器を振りかざして、まず若者に犠牲を強いるなよ」と注意しているような気がした。
現代の若者は少子高齢化の影響もあり、これからも少数派である。
多数派の大人から「みんなのために」という強力な論理の武器を振りかざされることが多いのだろう。
新海監督は現代社会からそんな要素を感じ取り、全体主義傾向の強い大人たちへの警鐘と若者に自分が望むように生きることへの勇気を与えようとしているのではないかと思いました。

また、このごろは何かあったときに、子供のころのように「きっと大丈夫」と強く信じて生きていくことができなくなってきているなと振り返りました。
それは大人になるにつれて「世の中に絶対なんてことはない」ということを学んだからだと思いますが、少しの寂しさを同時に感じました。

knzk