劇場公開日 2019年7月19日

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「『君の名は。』とは違う『裏・君の名は。』  「それでも世界は美しい。」「この世界で生きていく。」」天気の子 mary.poppinsさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0『君の名は。』とは違う『裏・君の名は。』  「それでも世界は美しい。」「この世界で生きていく。」

2019年8月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館、TV地上波

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My
Myさんのコメント
2019年8月14日

追加その4
他の多くのレビューで「スポンサー感が強すぎて嫌」と言われていますが
すごく上手にスポンサーを取り込んだ作品だと私は感心しました
(カップ麺のCMのギャグとかはおいといて(笑) 映画そのものの方にです)

『君の名は』大ヒットした監督の最新作に
ぜひスポンサーにつきたいという企業が増えるのも自然ですし
そこに金のにおいを観客が感じたとしても
それもまたこの作品の描く 社会の現実のひとつであり
作品テーマに沿っています。

ファーストフードばかりでは健康に良くないことも
みんな周知の事実だけど,監督は商品を
「素晴らしい食品ぜひ食べて」と宣伝しているわけじゃない。
それを食べて生活している貧困層の子供達がいる社会の現実を
そのまま描いているだけ。さらに
それでも子供達は
「また今日もこれしか買えない」と悲しそうな顔ひとつみせず
工夫して料理にアレンジし「美味しそう」と笑顔で喜び、
大人達がまゆをひそめるような生活の中でも
かつて文科省が学習指導要領で提示した
「たくましく生きる力」がしっかり育っています。
(「確かな学力」は育っているとは言い難いですが(笑))
マックを「16年間の人生で最高の食事だった」とか
レトルトを「豪華」と無邪気に喜んだり。
それまで子供達の育ってきた家庭環境の食事を想像すると
悲しいけどそれが現実社会の一つであり(しかも政府は目を向けない)
過去の寂しさも家出の理由も語らず
無邪気な笑顔だけ見せる子供達の姿に
なんてけなげなんだと うるっときてしまいます。
なりませんか?大人のみなさん。

ファーストフードの良い面 悪い面を理解した上で
作品テーマにきちんと取り込み
企業出資に敬意をはらい丁寧に描いています。
スポンサーとの関係もウィンウィンじゃないですか(^^)
新海監督の描き方 とても上手で素晴らしいと思いますよ。
子供が安易に映画をまねしてファーストフードに駆り立てられる
と心配してます?
それなら家庭の手料理にたっぷり愛情をこめましょう
子供だってそんなバカじゃないと思います
(もっともレビュー見てると、映画に込められた意味を
何も知ろうとしないバカな大人も多いようで悲しいですが)
「マックも好きだけど 母さんのみそ汁やカレーの方が好きだな
俺 帆高よりマシなんだな あいつつらかったんだろうな」
子供は気付くと思いますよ

My
Myさんのコメント
2019年8月14日

追加その3
新海監督が『ムー』読者だったんだなってことは『君の名は。』で気づいてたけど、
監督のこのインタビュー読んで↓ 新たな驚きが。
「ラスト付近でも、テッシーは鞄の中にムーを忍ばせているんです。
1.5秒くらいのカットなんですけど、その表紙に
「ティアマト彗星は人工天体だった」と書いてあるんですよ。」
監督ってば芸が細かい…! 新たな感動発見。
「ティアマト彗星は人工天体だった」とすれば
彗星落下の描写は
自然災害に翻弄される人間(3.11等を彷彿とさせる)
の構図よりも、むしろ
そもそも その災害の原因を作り出したのは人間自身だった
(自然災害でなく,原爆や原発事故,さらには
 宇宙ロケット開発の真の目的である 戦争ミサイル開発や
 それに伴う事故に見せかけた関係者暗殺 等に近い。)
そしてその被害者は,それらの問題に関係の無い 田舎の村人達
(先進国のゴミや汚物を引き受ける途上国,
 温暖化やゴミ問題は都会が最大要因なのに
 その結果として水位上昇や津波の被害を受けるのは田舎,
 東京優先で地方を苦しめる財政,
 等を彷彿とさせられる)
実はそんな社会への疑問を,
たった1.5秒の小道具にさりげなく しのばせていたのですね…!
これには感動が強まりました。
私は彗星落下直前のニュース交錯の場面に
さりげなくこめられた社会批判メッセージの描写がとても
感動したのですが,
ほかにもまだ隠されていたとは。
『君の名は。』は青春恋愛のイメージが強くて
気付かない人がほとんどだろうけど。
『天気の子』では 社会批判や問題提起のメッセージが
たっくさん込められていますが,まだまだ見落としているのがありそう。
そして
「は、意味不明 つまんない 君の名より落ちた」なんて低評価してる人達にも 気づいてほしい!

My
Myさんのコメント
2019年8月10日

追記その2

『君の名は。』で監督が登場人物の名前にこめたイメージを聞いて
なかなかおもしろかったので。今作の名前についてちょっと考えてみました。

帆高。 夏の海に高く帆をはってまっすぐ進んでいく舟のイメージがぴったり。
タカ という音の響き,監督の好みなんですねw タカキ,タカオ,タキ,ホタカ。
音の響きからは はきはきと快活で一本気な少年のイメージを感じます。

陽菜。晴れ女にぴったりな,太陽のもとすくすくのびていく小さな菜。
ヒナは雛 まだ幼く飛べない小鳥なのに その肩にすべてを背負わされているイメージも。

凪。 明け方と夕方の静かな海。それは年齢の割に大人びた感じや,ぐんぐん進む帆高より落ち着いて見える感じに似合いますね。

夏美。 キャラのイメージそのままな感じw

須賀。これは監督自身の話で,対談したスガシカオ氏に「思春期の時に こんな大人に出会いたかったな」と感じ 名前をいただいたそうです。

安井・高井。 高井は背も高いけど,ペアにすると明らかに 値段 カネの話ですね…w
現実主義で,目に見えないものなど信じないキャラに カネの姿はよく会います。

全体的にシンプルな名付け方に感じますね。

My
Myさんのコメント
2019年8月9日

文字数5000で入りきらず追加w
『君の名は。』でも社会派な要素が垣間見えますが
恋愛要素が目立ち,あまりその点に気づかずに見た人も多いようです。
瀧も三葉も一人親家庭であることもそう。
『天気の子』はより社会派作品です。
東京の繁華街の裏通り,捨て猫のように暮らす居場所の無い子ども達。
決して豊かではないファーストフードを「人生で一番おいしい食事だった」
と感じる帆高,家庭で抱えていた孤独がにじみます。
母親の手料理が健康的で愛情にあふれ美味しい…とは限らない。
幼少時の記憶。私にはとても共感できます。
ただし,この感覚は理解できない人の方が幸せです(笑)
「子供って,野菜とか栄養あるきちんとした食事より味付けの濃いジャンクが好きよねー」と苦笑して見ている人が一番おおらかで良いと思います。
でも現実にそういう生活の子供が今多く
是枝監督『誰も知らない』も思い出しました。

『君の名は』で私が一番印象的だった場面は
彗星が落ちる寸前に様々な情報が飛び交う中で
ほとんどの声が「人の住む地域に落ちる危険性は無いだろう」と楽観視し
一つの村が消え人々の命が消える寸前だというのに
「これほどの美しい天文現象を見ることができるのは
この時代を生きる私達にとって非常に幸運」と最後に響く声でした。
気付かずに 多くの犠牲の上に幸せを受け取る人々。
社会批判するのでなく 誰も傷つけないようなさりげない描き方で
表現したのは凄い!
「声」の氾濫するその場面に,今作の中で似ていると感じた場面が
帆高が走る姿を傍観する人々の「声」です。
多くは「馬鹿がいる,あれは迷惑行為だから捕まるぞ」と嘲笑。
誰も本気で「何かあったの?大丈夫?」と心配しない。
批判嘲笑の声は 毎日ネットや世間に溢れる声と同じ。
『君の名』で監督は 感動の声よりも 多数の批判の声を受けたそうです。
実際はネットの文字でも「声」として聞こえたのですね。
声といえば
主題歌のサビで爽やかに歌われる「声が言う」という不思議なフレーズ
ですが「行け」と励ます言葉は 夏美や須賀など近しい人の声だけでした。
雑音の中に 大切な人からの励ましの声だけを聞き分けて
世間が何と言おうと行く!と走る帆高は 新海監督の姿でもあり
例え批判や酷評の声が溢れても
耳に届く声は洋次郎氏の声やスタッフの声だけでなく
私の声も届いてほしいと願います。

My