「坂好きにはツボ」天気の子 よんしんさんの映画レビュー(感想・評価)
坂好きにはツボ
まず、主人公の女の子の住む家が田端にあります。
田端というのは、大昔、多摩川の流れによって切り出された武蔵野台地の最端の上野台地の崖の上に位置しています。
上野台地の崖線に沿って走っているのが京浜東北線で、山の手線は田端から上野台地を削って敷かれた線路を通り、池袋方面へ向かっていきます。
田端の2つ先の駅は王子で、その昔大晦日になると荒川から舟に乗って狐たちが王子へ初詣に来た、という伝説があるように、上野台地の崖の下にはまだ大きかった荒川が流れていたということが分かります。
また、武蔵野台地は多摩地方から東の山の手地域へ緩やかに下っているため、数十年前は大雨が降ると王子周辺は石神井川(滝乃川)の氾濫の被害に何度もあったそうです。
ってなことを知ってから本作を観ると、主人公の女の子の家が田端の崖の上に位置している、というのが絶妙だな~と感心させられます。
「君の名は」で思春期の恋愛事情にはピクリとも心が動かなかったオッサンでも、東京の地理をうまく使ったストーリーのギミックは楽しめました。
いつも映画を見ているTOHOシネマズ新宿の前を通ったり、本作を観ている池袋を通ったりと、登場人物たちの存在感がよりリアルに感じられました。
しかし2Dアニメの映像表現としては新海誠監督の作品は最上位でしょうね。
ディズニーが2Dアニメ映画を作らなくなった今、2Dアニメ作品で新海誠監督の映像美を超えるものは国内外問わずなかなか出ないんじゃないでしょうか?
アニメ映像の美しさといえば、「超時空要塞マクロス~愛・おぼえていますか~」や「王立宇宙軍 オネアミスの翼」が今でも心に残っていますが、現代では新海誠監督作品の右に出る者はいないでしょうねえ。