「命の重さ」天気の子 U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
命の重さ
なんだこの身勝手なエンディングは!!
と、憤ってみたものの、よくよく考えるとそういう事ではないように思う。
存在だとか自己犠牲だとか、同調圧力だとか、思いやりだとか、忖度だとか…周囲に波風立てない方法は色々あるけれど、それに潰されるなんて事があっていいわけない!!
と、言われてるような気がした。
彼は世界と引き換えに彼女を選んだ。
東京23区が水没しようと、あなたの居ない世界よりはいいと。
とんでもなく自己中心的な決断ではあるけれど、彼はそれらを背負う覚悟を決めた。
一昔前に耳にした「1人の命は地球より重い」との標語を思い出した。
大多数はこの考え方は素晴らしいという。だが現実はどおだろう?
クソみたいな理由で人は死ぬ。
自分の命も他人の命も、風に舞う木の葉よりも軽く扱われているような気がする。
その標語を建前ではなく、実行したのが彼なのだと思える。
それと真逆のメッセージも。
あなたのその選択によって、世界が変わる覚悟がありますか?と。
人生が選択と決断の連続なのは言うまでもない。その都度どっちを選択しようとも、自分の世界は一方向に流れていく。
そして、その選択は指先一つで世界に周知される事もあるし、人の命を絶つ事だってある。
時間は戻ってこない。
水没した東京が水没したままのように、失った命は返ってきはしない。
その十字架を背負うのは、紛れもない自分だ。人生が180度変わる事だってある。
その世界を生き抜く覚悟がありますか?と。責任がつきまとい、時にそれは一生かけて背負う場合だってありはする。
そういう自らの決断がもたらす影響を作品に込めたのかと感じた。
主人公たちは、思春期真っ只中だ。
家出をしネカフェで過ごす。
生活費の為に売春しようとする。
驚くほど手軽に入手する銃。
容赦のない大人からの暴力。
児童相談所
彼らを取り囲む現状は、今の時代とそう遠いものではないように思う。
彼らは逃げるという選択肢しかない。
善意ある暖かい手が差し出される確率は高くない。
彼は銃を手にし発砲する。
子供達を取り巻く環境がこれでもかってくらい投入されてる。
現実から目を背けないでと言わんばかりだ。
天気の子という表題には、幼子をイメージする。
彼らが突如降り出した雨の如く泣いていれば、周囲はあたふたするしザワザワもし、穏やかではない。
だけど、一度、彼らが太陽のように笑うだけで周囲の温度が上がるように暖かで幸せな気持ちになる。
天気と同じで、大人の都合や事情を汲んではくれない。コントロール出来ないものをコントロールしようとするから悲劇が起こる。
そんな多様なメッセージを感想として抱いた。
とてつもなく練りに練られた脚本に思える。作画は言うまでもなく素晴らしいのだけれど、アレはタイアップなのだろうなぁ。作中に描かれる実名広告の商品に、若干萎える…。