「最高傑作」天気の子 _イッセーさんの映画レビュー(感想・評価)
最高傑作
売れた映画の二作目は大体駄作の法則と、バッドエンドらしいという噂があったので期待半分、怖いもの見たさ半分で観てきました。
結論から言うと、アニメ史に残る傑作の一つです。
千と千尋の神隠しを映画館で視聴したとき並みの衝撃を受けました。
起承転結がしっかりしていて、笑えて泣けて安心できる、物語としての完成度が高い、映像のクォリティは言わずもがな昔のジブリ作品並みに繰り返して視聴できる完成度、映画館を出たときは世界観にどっぷりつかって放心状態でした。
前作の君の名は。も映画館で視聴しましたが、ストーリーがいまいち響かなかったので60点くらい、一回ネタバレしたら後半の黄昏時に再開するシーンを摘まみ食いすれば事足りたんですけど
こっちは雨と真夏という情緒あるシーンが多いのでこの季節に見るには最高でしょう。
レビューの平均点がいまいち控えめなところを考えると前作が好きな層にはピンと来なかったのかも知れませんが、
おそらくは前作が主人公とヒロイン双方の視点で展開されたダブル主人公ものに対して、本作は主人公視点で展開されて、ヒロイン視点は殆どない(設定の殆どがネタバレ)のが一因かと思われます。
前作のヒロイン三葉みたいに主人公と惹かれあうまでの過程を描くこともなければ、内面の描写も殆どありません。
男向けの作品ではお馴染みの王道ヒロイン。
個人的には好感の持てる主人公がいて、ヒロインがいて、後は冒険と感動という王道が好きなんで大満足なんですけど
前作ファンの多くが期待したのは女の子が主人公の冒険活劇orラブロマンス、要するに少女漫画やジブリの世界観。
残念ながら少女漫画ではないですし、さほどファンタジーでもない、バリバリの野郎向けのラノベ展開です。
それと主人公の心理描写が理解できないってコメントが多いようですが、確かに行動が極端な割に説明はありません。共感は難しいんじゃないでしょうかね。
でも、セカイ系(エヴァとか)の主人公って基本そうですし、新海誠の特色の一つでもあるので、個人的にはマイナス対象にはなりません。
前作の、君の名は。が、本来なら新海監督ではやらないような、極端に大衆向けすぎる作風が旧来のファンからは不評でしたし、もともと灰汁の強い監督なので、前作のヒットで発言権が増したら癖が出て前作からのファンは離れていくだろうと予想していましたが、案の定。
前作は監督の持ち味が封殺されて、ほぼ名義貸し状態なのに異常に持ち上げられてるのが無念だろうなと思ってたので、正直真っ当な評価が出るようになってほっとしてます。
前作は東映が天才的な描画力はあるけど、売れる作風じゃない監督に売れ線をごり押ししただけなんで売れて当たり前なんです・・・。
一発屋とかじゃなくて、売り方を知ってる東映が100%手綱を握って天才を動かしたら当然売れます。
でも前回のヒットで新海誠の名は大きくなりすぎて、東映が100%コントロールできる存在じゃなくなったので二作目は監督の我が幾分か通る、そして元々大衆受けしない作風なので客が離れる。
ここまでは完全に既定路線です。
正直、バッドエンドで二度と見るか!ってな作品になるかと思いましたが、流石に最後の一線だけは守りましたね。100%の新海誠は旧来のファンでも正直きつい
天才の癖を抑えつつ見られる作品を作る。映画屋とクリエイターのパワーバランスとしてはここら辺がベストかなと。