劇場公開日 2019年7月19日

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「圧倒的な内容の薄さ。新海誠はタマなしになったのか?」天気の子 ヨックモックさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0圧倒的な内容の薄さ。新海誠はタマなしになったのか?

2019年7月22日
PCから投稿

内容うっっっっす!!!!!
ジャパニーズコンドームかな!?!!??
決して過度に貶すわけではなく、本当に言葉通り“絵が綺麗なだけで他になにも無い虚構のアニメ”
もしもこんなクソみたいなコンテンツが評価されるのだったら、日本の優れたアニメーションの定義は『綺麗な絵が動いているもの』になってしまう。そんなことは断じてあってはならない。

これまで触れてきた新海誠の作品の中でも圧倒的にスッカラカンで煮ても焼いても食えない醜い作品に仕上がっている。
君の名にあったような脳みそ空っぽにして見れるようなチープで安直だけどわかりやすいエンターテインメント作品でもなければ、新海特有のこじらせた気持ち悪さが発露している振り切れた作品でもない。(個人的には好きではなかったが)新海誠の作品には、しっかり本人が描きたいテーマがあったはずだ。どうしたんだ新海誠。川村元気にタマを切り取られたのか?

とにかく、この作品で何を描きたいのか、何を訴えたいのかが全くわからない。
恋に盛ったガキが社会や体制を敵に回してたった一人の少女を救うなんて図式はオタクコンテンツに限らず擦られ切ったフォーマットだが、それに対する独自のテーマ設定が全く為されていない。よくあるセカイ系の骨組みに一切味付けがされていないようなコクもうま味もないシナリオは、もはや見ている人間の感性をバカにしているかのような印象すら受ける。
何故これをさも議論を生む深淵なシナリオなどと新海誠はほざけるのだろうか。

もしもこの作品が「東京水没の災害よりも、人間一人の命のほうが尊い」という人命至上主義的なヒューマニズムを描くことが主題だとしたら、もっとそれにフォーカスしたシナリオが描けたはずだ。「自己犠牲なんてクソ食らえ」ということを訴えたいのだったら、主人公とヒロインのために自分達の立場を犠牲にした圭介や夏美はただの道化役に成り下がる。
代わりに詰め込まれてるのは。親なしの子供がいい感じにオシャレな部屋で暮らしていたり、なかなかイカしたユニフォームのフットサルチームに参加しているようなエセ貧困家庭やら(これで若者の貧困を描いているなどとほざくなら本当に脳を疑う)、漠然と就活うまくいかない色っぽいサブカルお姉さんだとか、特に理由もなく子供と物理的な距離感のある男やもめだとか、不必要にモテるクソガキだとか、とにかく登場キャラクターの個性に統一性や連続性がなく無駄に満ちている。描かれているものが点で散らばりまったく線をなしていない。そしてどれもが極めて浅い。
そんなバラバラの要素が、薄っぺらな『新海誠がオシャレだと感じた画面映えするシーンを描くための設定』としか機能していない。まったくもってバカバカしい。

主要キャラクターの魅力も致命的に薄い。この東京を滅ぼす判断をした帆高は、別に大それた理由も明示されることもなくなんとなく家出してるボンクラで、出会って数日の女に惚れて勢いで犯罪に手を染める。親を殺して飛び出してきたわけでもないのに「帰りたくない」の一点張りで官憲に盾突き、たまたま出会った美少女に異様な執着をする。そんなアホが何も考えずにノリで下す決断に、我々視聴者はどう共感せよというのか。
世界を大幅に悪い方向へと変えてしまい、それでもそれに対するもっともらしい大人の見解(天気など人間が本来コントロールできるものではない)が用意されているにも関わらず、ラストシーンでは希望にきらきらした目で「いや、僕たちが世界を変えたんだ!」とか吠えてるこの男はサイコパスか何かなのだろうか??
自分達の決断を背負って生きていく覚悟があるんだったら少しは神妙にしろ。大災害に見舞われた東京が、さも平和で美しく生き生きした街として描かれているのもなんとも間抜けで偽善に満ちている。

あらゆる側面がクソな映画だが、しかし背景美術の美しさだけは評価すべきだろう。
広告をここまで盛り盛った映画はなかなか類をみないが、結果としてリアルな東京の情景や生活感を演出するのに役に立っていたのでなかなか興味深い。広告商品のなじませ方という点では、これまでのどの作品よりも上手くいっていた。成功の理由のひとつはとにかく数が多いこと。だからひとつの商品が悪目立ちしなかった。そしてあくまで作中のひとつのオブジェクトにしかなっていなかったこと。きっと広告出稿社とのネゴシエーションを行った人間が有能だったのだろう。

そのほか細かい感想
・婦警さんが可愛い
・帆高は終始東京怖いとか言ってるけど、神津島も東京都だぞ?
・バーニラ!バニラ!バニラバーニラ!
・婦警さんの太眉が可愛い

しかし、もはやジャパニメーションの中で児童相談所は完全に悪の施設だ。おおかみこどものでもそうだった。現実世界では虐待の疑いがある児童を救うべく、法と訴訟のぎりぎりのラインで戦っているというのにフィクションの中では悪役ばかりにされているのだから、やりきれないだろう。

ヨックモック