「今までにない侵略」ゼイカム 到来 MASERATIさんの映画レビュー(感想・評価)
今までにない侵略
エイリアンは、あらゆる手段で地球を我が物にしようと襲ってくる。シールドを張った卑怯な宇宙船で火の海にしたり、人に寄生して地味に乗っ取っていったりとせわしない。本作のエイリアンもどちらかと言えば地味系。クリスマスの日に突然家が謎の黒い色のメタル(金属)で覆われ、テレビ画面に緊急信号と共にメッセージが届く。その指示に従っていれば安全だと言われれば、心理的に政府などの機関が救おうとしてくれていると思うはず。ここからが本作の本筋というか、面白いところである。
「外は汚染されてる」とメッセージを受け取ったところで、中々信用しがたい部分があるが、実際に感染を防ぐという薬が注射器と共に煙突を通して届けば信用してしまうだろう。「10クローバーフィールド・レーン」の様に、外部との接触が無いままその状況下だと、信憑性に欠け、信じるべきがそうでないのかの疑心暗鬼になってしまう。ところが本作では物理的な接触もあることからかなりの確率で信じてしまうだろうという訳だ。
オチが非常に期待できる展開で、非常事態になる前から険悪ムードだった一家のゆくえも非常に興味深い展開であった。政府が解決策を見つけて敵を駆逐し、助けに乗り込んできた際には、家族の殺し合いに発展しており、全滅していたというラストが頭によぎるほど、この家族はトゲトゲしいのである。しかし、その様々な期待には応えてくれなかった。これだけ不条理な展開で様々な伏線なども考えたが、終盤は急に幼稚な感じに思えて仕方ない。ラストで急に普通のSFホラーに戻ったような印象だ。衝撃と言えば衝撃だが、中盤のソリッド・シチュエーション要素に注視し過ぎ、ラストの衝撃が薄いという映画としてどうなのかと思ってしまうラストを迎えた。
不条理なSFホラーとして完成度は高めだが、大きい引きで期待した獲物が小魚だった時のような気持ちになってしまった。これでは、やや消化不良である。