「quid pro quo」エリザベス∞エクスペリメント いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
quid pro quo
未体験ゾーンの映画たち2019の作品群の中の一作。
青山シアターにてネット鑑賞。
“等価交換”というラテン語であるが、サンドウィッチマン富沢に喩えるならば『何言ってんだかよく分らない』ということだろうw
スーパーモデルが、スタイリッシュなSFサスペンスホラーを自身のプロモーション込みで出演してみました的経緯が透けて見える作品である。それなりにお金が掛かってる感じがするし、まぁ手頃な塩梅といった雰囲気である。
ストーリー設定も、なんとなくどこでも擦られてきたプロットであるクローン人間の自我の芽生えからの反乱モノという流れであるし、編集や映像効果も野暮ったくはなく、外連味のあるショットである。
只それだけである、というか、深みはまるで感じない出来だ。ストーリー的には面白く、サスペンス要素が強い構成も悪くはない。しかし、センテンスの繋がりが薄く、伏線が仕掛けられてないため“後出しジャンケン”の様相を呈している感が拭えない。欧米の映画らしく、ドライな心情描写で淡白なのである。もし今作品を江戸川乱歩調に、もっと情念たっぷりに作ってみたらドラマティックさに彩りが増すのではないかと想うのだが・・・
初めは妻のクローンを造りたかった夫が、段々と失敗作を殺す魅力に取憑かれる内容や、自分の母のクローンなのに愛してしまう盲目の息子、しかし実はその息子も又夫のクローンだという事実、そしてその夫のことを好きになってしまい、愛情と科学本来の好奇心故、禁断の実験に手を貸してしまう女性科学者等、それぞれののっぴきならない不実な関係性が繰広げられているのに、かなり“アメリカン”な仕上がりだから、没入感がゼロなのである。脚色をもっと濃くできていれば、かなり奇妙で興味を掻立てられる作品にできあがっていたことだろうに、かなり残念であった。ラストシーンのフクロウの絵を持って家から出る件も“蛇足”な結末かなぁと感じた次第。