「よくあるタイトル詐欺B級映画の豪華版!」モンスターハンター カガチさんの映画レビュー(感想・評価)
よくあるタイトル詐欺B級映画の豪華版!
ポール・W・S・アンダーソンは「ゲームの映画化」を好き好んで行うが、同時に「映画をダメにする天才」だ。
バイオハザードシリーズを見た人ならわかると思うが、この監督は着眼点や物語展開の発想は良いのに、それを本編で活かせず、謎のオリジナル展開やオリキャラが活躍して、最終的に別物の作品に代わり果てる。原作レイプも甚だしい。
そして今回の被害者「モンスターハンター」は、言わずと知れた全世界で大人気のゲームタイトルだが、本作はそのタイトルだけをもぎ取り、監督の奥様を個人的な趣味で主演に駆り立て、原作ゲームの内容を徹底的に無視して完成した、みすぼらしい同人作品になっている。
まず最大の問題点として、主役が「我々が暮らすこの現代」からの転移者であること。
映画を隅から隅まで見てみてもなお理解できないが、この設定は全くもって必要ない。
物語の序盤に、主役が(向こうの世界の住人にとって)異世界人と言う事で、向こうの住人との言語相違でひと悶着あり、その後も言語不一致設定のせいで訓練やコミュニケーションがもたつき、幾度となく観客をイラつかせる。
だが終盤、決戦前に現れたギルドマスター(大団長)は、何と英語(こちらの言語)ペラペラ。
ペラペラな理由は、主役と同様こちらの世界の住人が度々流れてくることがあり、その人と話しているうちに自然と身に着いたらしい……。
いや、は?結局そんなご都合主義設定があとで出て来るなら、序盤の言語相違はなんだったの?
結局何が問題かと言うと、こっちが見たかったのは言語不一致で争う人同士ではなく、大迫力のモンスターvs人間と言う、モンハンの原点にして最高の設定である「人間絶対不利バトル」なのだ。
これはあくまで個人的推測だが、恐らく監督は主人公を我々観客と同じ立場にするために、現代の知識がある異世界人(ゲームに入り込むプレイヤー)にしたかったのだろうが、ただでさえ本編が90分ちょっとしかないのに、そんな込み入った設定はいらない。
そんな無駄な事をするのなら、もっとバトルシーンを描いてほしかった。
そして次に、主役の訓練シーンだ。
これが無駄に長い。
さっきも触れたが、本編が90分ちょっとしかないのに、主役が現地(異世界)の戦闘になれる為に、向こうの住人と共に戦闘訓練をする。
これこそダイジェストでよかったし、何ならバイオの時の様な「実は主人公強かった設定」にすれば、それなりにバトルシーンも増やせたはずなのに、主役が住人と打ち解けた中盤以降は、ダラダラと訓練シーンを垂れ流す。
このシーンが不要とまでは言わないが、もう少しスマートな展開があった気もする。
最後に、出現モンスターだ。
これに関しては個人的な趣向もあるだろうが、なんか「これぞモンハン!」みたいなモンスターが出ていない気がする。
ディアブロスやリオレウス、最後のゴア・マガラが出てきたときはテンションが上がったが、序盤のネルスキュラは、裂かれた尺の割に原作においてそんなに強い連中でもない為、どこか物足りなさを感じる。
異世界に迷い込んだ主人公一行を嬲る役にはうってつけかもしれないし、エイリアンの様な演出にはドキドキしたが、こっちはそこまでネルスキュラを求めていない。
それならレイアやクルペッコなど、それなりに出て欲しい連中もいた訳で…
とまぁ、要は主役が異世界人ではなく、「昔レウスに親を殺された女戦士」などに置き換えて、どうしても異世界要因が欲しいなら、もう一人の主役として「訳も分からず異世界から転移してきた男性」を沸きに添えれば、それなりにまとまった気もする。
まとめると、バトルシーンの割にヒューマンドラマが長く、設定も曖昧なせいで見ていて飽きる内容だった。
個人的感想
これは吹き替えの話しだが、すぐに死ぬ主役周りのわき役に豪華声優を添えて、それを宣伝文句にしたのは、映画自体に魅力が無いからではないか?
全世界待望…などと言っていたが、待っていたのはこれじゃない感が半端なかった。