「説明不足・矛盾点があっても,雰囲気と音楽が良ければ感動できる人向け」HELLO WORLD Happy Manさんの映画レビュー(感想・評価)
説明不足・矛盾点があっても,雰囲気と音楽が良ければ感動できる人向け
【概要】
・高校生の主人公が,未来から来た自分のサポートで彼女を作り,彼女を事故から救う話.そこから急展開があったりなかったり.
【総括】
SF映画であるが,説明不足な点が多かった.劇中の急展開のシーンは想像力を働かせてなんとか理解できたが,細かい描写は想像が追いつかず,おかげで感情移入が全くできなかった.そのくせ,登場人物の感情はエフェクトや本人の説明でド直球に表現されていた.「ささいな仕草や表情から感情を想像する」ことが好きな視聴者には合わないと言える.
この映画は,時間・IT系を絡めたSFジャンルだが,この分野は特に矛盾が気になってしまう分野だと思う.声優,主題歌,広告,映像など,お金がかかっているのは伝わったが,それ故,脚本の不精密な部分が極めて目立っていた.
【急展開の考察】
・結局,劇中には3層の世界があり,下層2つがデータ世界で,最後に出てくる最上位層は現実かデータかはまだ不明,ということで理解しました.
[上層] 一行 == カラスが,なんらかの事故で脳死した10年後主人公を復活させるべく,中層,下層へ自らを送る
[中層] 10年後の主人公が,10年前に亡くなった一行を復活させるべく,下層の高校生主人公の下へカラスを連れて一行の回収へ行く.
[下層] 高校生の主人公が普通に暮らす.
【良かった点】
・この映画が自分に合わなかった理由を考えることで,自分の好きな映画のタイプが明確に分かったこと.
・急展開は良かった.
【悪かった点】
・最後の急展開が,前の急展開と同じ内容で,さすがに「ハイハイ...」という気持ちだった.
・「感情」がエフェクトや本人の説明としてド直球に表現されていて,「想像」する必要性が全くなく,この点では面白みに欠けた.
・細かい描写の説明がほとんどなかったため,困難の理由も理解できず,感情移入が難しかった点.例えば,「主人公の10年間の努力の詳細」が結果しか語られなかった点や,序盤の主人公の錬金術練習中の苦労の理由など.
・なんでもできそうな「Good Design」だが,オシャレを追求する一方で,「もっと効率的なものを作ればいいのに...」と思うシーンが多々合った.そのせいで本気度に疑問が生じ,感情移入できない原因の1つになった.
・他の作品を連想させる,いわゆる「パクリ」が多くあった点.ストーリはシュタゲ,色合いはサマーウォーズ・まどマギ,技はハガレン,敵は祟り神(もののけ姫).
【疑問】
・「Good Design」をなぜ10年後の主人公も使わないのか.10年後の主人公も持ってれば,最後,本人が話した死ぬ理由もなくなった.
・主人公が10年のうちで後遺症を負うほどに一行さんを助けたかったのは伝わるが,なぜ燃えるベストを着用する必要があったのか.何が困難だったのかが伝わらず,「成功した!!」と言われてもそれがすごいことなのかが伝わらなかった.PC画面の斜線が引かれていた数値も,努力の足跡というのは伝わるが,それが何なのかを考える必要があり,その思考をバカバカしいと思ってしまった.
・主人公の錬金術は,何が難しくて,使用者に負担がかかるものなのかが全く説明がなかった.そのせいで,序盤の修行も「なぜ出せないの?」が気になって感情移入できなかった.また,最後のタタリ神(ナウシカ)の攻撃を止めるシーンでも,手を出して震えて耐えていたが,錬金物には神経が通っているのか?
・記録データであるなら,もちろん目的は「バックアップ」であり,データの抽出なんてものは容易なはず.一行さんの死ぬ前の脳を取り出したいなら,わざわざ再放送しなくても,雷が落ちる前で時間指定して,コピーすれば良い,という単純な話ではないのか.
・量子コンピュータって,記録装置ではなくない...?
【気になった点】
・主人公の世界がリセットされそうになり,世界が崩壊中,回想の「お前はデータだ」のあとに主人公が「俺,死ぬのか」って呟いたシーン.データなら,「死ぬ」より「消える」のほうが適切.「死ぬ」には痛みを伴う意味が含まれていると思うが,「消える」にはそれがなく,また,記憶はなくなるが再度一行さんと結ばれることが分かっているから,「死ぬ」よりは軽いと感じた.よって,この誤用は大きいと思う.
細かな点のチェックで恐縮なのですが
「祟り神」は「もののけ姫」かと。
ナウシカからだと「巨神兵」でしょうか。もしくは「王蟲」。
大きいのが一体よりも、小さいのが沢山の方が
個人的には怖さを感じました。