「アニメを作る人のインプットはアニメなのか」HELLO WORLD Scottさんの映画レビュー(感想・評価)
アニメを作る人のインプットはアニメなのか
今ひとつ突き抜けない話なんだけど、脚本・野崎まどだからこんなもんだろうなと思うの。
はじめは《マトリックス》だよね。それで京都を舞台にして森見登美彦っぽくなって。「この世界もあの世界もシミュレーションか」ってニック・ボストロムの話が加味されて。
最後はうまくまとめて、そこは凄いなって思った。
あるシミュレーション世界でキャラクターが欠損したら、どういう埋め方をしても、欠損するシミュレーション世界ができるんだよね。主人公とヒロインが共に欠損する世界を一つ作ってそれで解決してんのかな。
それで、今ひとつ突き抜けない話のように、今ひとつ突き抜けない映像なんだよね。
「文句言うならお前描いてみろよ」と言われると、これ以上は描けないとは思うんだけど。
システムが追い掛けてくるとキツネの面がくるんだよね。「《四畳半神話大系》かよ!」と思っちゃった。
キツネ面が合体して巨大化した姿も「工夫はあるが、これなのか」と思っちゃったな。
複数のシミュレーション世界がこんがらがるところを描く抽象的な映像は、うまいと思うものの、芸大の卒業制作の域を出ないというか。
表現が全体的に《プロメア》に似てるなあとも思ったのね。
存在しない世界を描こうとすると、宮崎駿や押井守みたいな天才に近い人が必要になるのかな。
抽象的映像のところとかシュールレアリスムを借用したら良い気がすんだよね。
人物造形の薄さは文学作品読み込んだりして補うしかないかな。
アニメを作る人のインプットはアニメなんじゃないかって気がしたの。これだけ多くのアニメが出てるから、追い掛けるだけで時間がいっぱいになるからしょうがないとも思うのね。
でも、もし、文学でも美術でも音楽でも良いんだけど、ファインアートの造詣を深めにいく製作者がいたら、頭一つ抜けるんじゃないかと思ったの。
そういう人が作る作品は面白い気がするし、一つ宜しくお願いします。