眠る村のレビュー・感想・評価
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名張の毒入り葡萄酒事件のファイナル
一審無罪、高裁と最高裁で死刑判決、再審請求、執行されることなく獄死した奥西勝。
物的証拠の疑問点を明らかにしてきた弁護団だったが、自白を偏重する司法の前では無力だった。
さて、村人はどう思っていたのか、どうして供述を一斉に変えたのか、などに迫るが、遅すぎたと思う。
題名は眠る司法の意。
絶望の裁判所 その1
以前、「絶望の裁判所」という本を読んだが、裁判官の世界は期待される姿とは異なり、公明正大・中立とは言いがたい現場のようだ。
司法の“腐敗”は、法が国家・国民の拠りどころであるがゆえに、三権力(立法・司法・行政)の中では、ある意味、最もタチが悪い。
この事件では、物証は極めて少ないのであるが、(1)歯型の画像分析、(2)毒物の成分分析、(3)接着剤の赤外成分分析という、新たな科学分析結果が出る毎に、物証の不備を指摘した再審請求がなされている。
にもかかわらず、裁判所は、被疑者本人が半世紀前に否定している「自白」に、「信用性がある」として再審請求を退けるのだ。
しかし、「松川事件」を挙げるまでもなく、昔の捜査の自白強要に、大きな問題と虚偽があることは周知のことである。
このドキュメンタリーを信じれば、“物的証拠のない死刑判決”となる。
しかも、自白の前後で、村人の証言が変わっているという異常さ。
“文系”裁判官の“科学オンチ”では説明がつかない、“作為”を考えざるを得ない。
一番の問題は、事件当時ならばともかく、2015年においてさえこの状況がまかり通っていることであり、慄然とせざるを得ない。
村人たちも、“発言力も、地位も、金も、学歴も、友達もいない”男が犯人ならば、好都合とばかりに幕引きを歓迎し、沈黙する。
「村八分」ということの、“本当の意味”を理解できた気がする。
これが最後かも
名張毒ぶどう酒事件を扱うドキュメントをつくり続けてきた東海テレビ。
すでに犯人とおぼしき奥西は死亡し、縁者も絶えようとしているいま、これがこの事件を扱うドキュメントの見納めかもしれないと思いました。
帝銀事件のようにこの事件そのものが眠りつくのもそう遠くはあるまい。
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