劇場公開日 2019年2月2日

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「絶望の裁判所 その1」眠る村 Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0絶望の裁判所 その1

2019年12月16日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

以前、「絶望の裁判所」という本を読んだが、裁判官の世界は期待される姿とは異なり、公明正大・中立とは言いがたい現場のようだ。
司法の“腐敗”は、法が国家・国民の拠りどころであるがゆえに、三権力(立法・司法・行政)の中では、ある意味、最もタチが悪い。

この事件では、物証は極めて少ないのであるが、(1)歯型の画像分析、(2)毒物の成分分析、(3)接着剤の赤外成分分析という、新たな科学分析結果が出る毎に、物証の不備を指摘した再審請求がなされている。
にもかかわらず、裁判所は、被疑者本人が半世紀前に否定している「自白」に、「信用性がある」として再審請求を退けるのだ。
しかし、「松川事件」を挙げるまでもなく、昔の捜査の自白強要に、大きな問題と虚偽があることは周知のことである。

このドキュメンタリーを信じれば、“物的証拠のない死刑判決”となる。
しかも、自白の前後で、村人の証言が変わっているという異常さ。
“文系”裁判官の“科学オンチ”では説明がつかない、“作為”を考えざるを得ない。
一番の問題は、事件当時ならばともかく、2015年においてさえこの状況がまかり通っていることであり、慄然とせざるを得ない。

村人たちも、“発言力も、地位も、金も、学歴も、友達もいない”男が犯人ならば、好都合とばかりに幕引きを歓迎し、沈黙する。
「村八分」ということの、“本当の意味”を理解できた気がする。

Imperator