「ホラー映画かと思っていたら、マッチョ系アクション映画だった件」アス たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
ホラー映画かと思っていたら、マッチョ系アクション映画だった件
ビーチハウスを訪れていた一家に襲いかかる、自分たちにそっくりな存在の恐怖を描くホラー映画。
監督/脚本は『キアヌ』(脚本のみ)、『ゲット・アウト』の、オスカー脚本家ジョーダン・ピール。
ポスターのデザインや予告編がすごく良い感じだったので、映画館で鑑賞。
アメリカの地下には長いトンネルがある…
というモノローグから映画は始まります。
次に1986年、とある家族が遊園地で遊んでいる場面に移ります。
その遊園地で迷子になる少女。
彼女が鏡の迷路に迷い込むと、そこで奇妙な出来事が!
不安感を煽る音楽とともにクローズアップされる何者かの瞳。
カメラがぐっと引くとそこには檻に閉じ込められる多数のウサギ…
このオープニングはすごく良い!
これから起こるであろう恐怖の展開を期待させてくれます!
時代が現代に移り、プロローグの少女が大人になって登場。どうやら彼女が主役の様子。
大柄で陽気な黒人というステレオタイプな旦那と今時な感じのちょっとクールな娘、どこか内向的な感じのする息子の4人で夏休みを別荘で過ごそうとしているようです。
別荘に荷物を降ろし、ビーチに向かう道中、行く先に救急車が。どうやら死体を担ぎ込んでいる様子。嫌なもの見たなー、という感じの一家。
ビーチで友達一家と待ち合わせ、楽しく過ごそうとするが主人公であるアデレードは暗い顔。
ちょっと姿の見えなくなった息子を過剰に心配するなど、どうやら普通じゃない様子。
息子はビーチで突っ立っている男の後ろ姿を目撃。手には血が付いている…
夜になり、昔このビーチで迷子になり、恐ろしいものを見たと夫に打ち明けるアデレード。
夫は気にも留めないが、家の外に4人組の人影が見える。影になって顔は見えない。
彼らを追い払おうとする夫。すると急に彼らが襲ってきて…!!!
…はい、ここまでは非常に良いです。
すごくスリラー要素満載で、これからどうなるのかハラハラしながら観ていました。
しかし、この4人組が家に侵入してからはただのアクション映画。
ドッペルゲンガーが本物を殺しにくるという発想は良いと思うし、彼らは非常に恐ろしいのですが、舐めプが過ぎる!
さっさと主人公一家を殺せばいいのにグダグダやってて結局逃げられる。
デカいハサミを持っているのだから、ゴア描写があるのか?と思いきや、そういう場面はほとんどなし。
ハサミでの殺害場面はありますが、そこはあえて残酷な描写にしていない感じがしました。
多少はグロい感じにした方が映画のカラーと合うと思うのだけど…。
はじめこそ怖がっている主人公一家ですが、途中からは余裕すら感じられます。
『ホーム・アローン』ネタを提案したり、殺したドッペルゲンガーの数を競ったり。
娘はここぞとばかりに車を運転しようとします。こんな状況で初心者に運転させとる場合かっ!
サスペンス・スリラー映画のはずなんですが、途中からはなんか面白くなってきて普通に笑えました。特にアデレードのバーサーカー化がすごい。
ドッペルゲンガーを火かき棒で容赦なく殺し、フクロウのギミックを驚くこともなく粉砕。ここは会場からもちょっと笑いが起こりました。
最後はとある施設でアデレード対ドッペルゲンガーの一騎打ち。
ドッペルゲンガーの正体が明かされるのですが、あまりにも破茶滅茶な展開が続いていたので、そんなことはもうどうでもよくなっていました。というか、そこ台詞で説明する?
ぶっちゃけ、彼らがなんなのかよくわかっていません。廃棄されたクローン人間?
そもそもそんなやばそうな施設に簡単に歩いて行けるってどうなんだという話ですが。餌がウサギというのもよくわからん。
というかここでもドッペルゲンガーの舐めプがひどい。本気で戦えよバカっ!
子供の頃のバレエの演奏会がキーになっていたようですが、そこの説明なり描写なりがそれまでほとんどなかったため、唐突に感じます。
何だかんだで、最後は家族揃って脱出。
全体的にすごい馬鹿馬鹿しい映画ですが、ゾッとする回想シーンからの、仮面を被る息子というラストシーンは非常に良い!
映画の最初の方とラストシーンだけはホラー映画。
あとの部分は黒人のフィジカルの強さを紹介してくれるマッチョ的アクション映画です。
いや、そもそも、ホラー映画だと認識して鑑賞するのが間違っているのかも。
コメディアン出身の監督らしい、ブラック・ジョーク満載のコメディ映画として観るべきだったのか…?
『Us』=「私たち」と「アメリカ」というダブル・ミーニングになっており、アメリカの格差社会や差別を皮肉った内容になっているのだろうが、あまりにも地下の住人達の設定が無茶苦茶すぎて、ハマれなかったなぁ。
『ジョーカー』や『パラサイト』といった、本作と同じようなテーマを扱った作品が2019年は話題を集めましたが、この2作に比べれば本作は劣るなぁ…
凄惨な場面にビーチ・ボーイズの「グッドバイブレーション」が流れ、警察呼んで…のところでN.W.Aの「ファック・ザ・ポリス」が流れるところのシークエンスは、流石コメディアン出身の監督だけあって面白かった🤣