「エレミヤ書11章11節」アス いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
エレミヤ書11章11節
『エレミヤ書』は旧約聖書の一書であり、三大預言書の一つであり、その第11章は『それゆえ、主はこう仰せられる。「見よ。わたしは彼らにわざわいを下す。彼らはそれからのがれることはできない。彼らはわたしに叫ぶだろうが、わたしは彼らに聞かない。』という言葉が書かれているとのこと。宗教的な暗示ということだろうが、作中には何も説明もないから意味深な演出ばかりで恐怖感を誘う手法であろう。アメリカでは誰でも知ってるのだろうかねぇ。
破綻というところの周辺まで今作品は辿り着いてしまっているのだが、アイデアは面白いのにそれを巧く辻褄合せが出来ておらず、唐突な後出しジャンケンみたいな説明がついて回るので、恐怖を抱く前に疑問符ばかりである。特にラストのオチは、何となく実は入れ替わっていたんじゃないかなぁと推理していたので、そこには驚きはない。それよりも最大の謎は、クローン人間がアメリカ中の沢山の地下壕に居て、地上の人間と同じ動きをあの天井のある部屋の中で行なっているのかの意味不明な設定である。
そもそものストーリー設定として、主人公の妻が実はそのクローン人間であるのは分るが、あのビックリハウスで地下に連れ去り、監禁した後に、一時期失語症に陥るのは、オリジナルが地下の世界の異質さにそうなってしまったからなのか?そしてバレエも、地下でオリジナルが舞っていたからということは誰が教えていたのか?と、まぁ余りにもディティールの解釈がきちんと作中にはっきりと示していないのでクエスチョンマークが頭の中でラインダンスを踊っているかのような状態である。そもそもクローン人間からすれば、あのサンタクルーズのボードウォークは禁忌であった筈なのにノコノコと現れるその必要性も希薄だし、オリジナルが襲ってきたとき、驚きはしても恐怖におののくリアクションはおかしいのではないだろうか?まぁ、後半に展開していくにつれ、その殺人を愉しむ姿勢において、徐々にネタバレを意識させているんだろうけど、それは徐々に隠していた本来の性質が表面化してきたということなのだろうか?もっと根源的に言えば、クローン人間製造の説明の件が余りにもアッサリしすぎていて、印象を深く観客に植え付けていないから、凶暴なのが兎を生で食べるという理由なのかとか勝手に解釈してしまったりしまうのである。同じ動きをする理由もよく分らないし、そもそもアメリカ人全員分のクローン人間がいるのか、そしてあの東海岸から西海岸までの手繋ぎのパフォーマンスは、宗教的儀式として何の意味があるのか、しっくりこない展開に頭が追いついていけない。細かいアイデアとしての、末息子が自分が後すざりすることで、クローンも同じ行動を真似し、バックで燃えている車の中に入ってしまうシーンはその設定を巧く利用しているのだが、そんな諸々の些末が本作のキモではあるまい。結局、末息子だけは母親の正体が感覚で気付いてしまった、しかし地上ではクローンによる粛清が始まろうとしているところで作品が終わる。結局、伏線回収の中途半端さと、ホラーとしての驚かせ方の昔からのパターンの踏襲のみで、何も目新しさは感じられなかった。前作での練られた傑作度合いに比べると、残念ながら嘆く他はない。
>>t0moriさん
貴殿の本作のレビューが見当たらなかったので、僭越ですが私のレビューにご返事させて頂きます。もしお読み頂けたら幸いです。
コメント、ありがとうございます。貴殿の的確且つ詳細な解釈、目から鱗が落ちました。失語症の件を貴殿のお考えに当てはめますとまるでパズルのピースが埋まるような、霧が晴れたような心地です。本当にありがとうございます。
改めて自分のレビューを読んでみると、相変わらずの近視眼的見方に居たたまれなくなります。
設定面で雑なのは前作からですが、一点、今観てきたばかりで、ちょっと気になった所を補足させて下さい。
地上に出たドッペルゲンガーが暫くの間失語症なのは、そもそも言語教育を受けておらず、言葉を知らないからです。だから他のクローン達は奇声のみで言葉を発しません(つまりダンスより何よりそこが彼女はいたが特別だった)。成長するにつれ、言語を習得していったのでしょう。対して、地下にいたオリジナルの方は首を絞められたことにより、声を発するのが難儀になっています。言葉は知っているけど、喉が潰れて声が出しにくい状態。
オリジナルとコピーが同じ行動を取るのは、おっしゃるように末っ子の行動で描かれてはいますが、ちょっとこの辺、都合がいいんですよねぇ……リアルタイムなのか、習慣としてなのか、シンクロしてない所も多々あって、ちょっと曖昧すぎるので、確かにその辺は鑑賞時の雑音になると思います。
まあ、ガチガチに固めてやりすぎると何もできなくなるので、今くらいが落とし所、と思ってのことだと好意的に解釈していますが、前作『ゲットアウト』でも能力の解釈がアレの交換だけでいいのか?とか、乱暴なところがあったので気になりはしました。
>>M.Brodyさん
貴殿の本作のレビューが見当たらなかったので、僭越ですが私のレビューにご返事させて頂きます。もしお読み頂けたら幸いです。
コメント、ありがとうございます。貴殿の本作へのご指摘、的を射ているとご賛同致します。寓話とメタファーは、実際観客は試されてはいるんでしょうけど、それこそ冗談ですがレイティングシステムのような、『本作は深く読み解く内容だよ』とか、『観た儘、穿った見方しないで素直に観て下さいね』とか、そんな親切・・・お節介ですなw 失礼しました。
代弁助かります…。
序盤から中盤の緊張感や演出は好きだったんですけど、『ゲットアウト』と比べると広げた風呂敷の畳み方がとにかく雑だなという印象。
ジョーダン・ピール監督作品、という下駄を履いていなければ酷評の嵐だったのではないかと。
丁寧にご返信いただき恐縮です。
極めて個人的な感覚での印象なのです
が、トランプさんがあれほど直情的なのに(実は計算ずく⁈)、それなりに評価する人もたくさんいて、不思議な安定感(株価は乱高下してますが)すらある現状に、アメリカの映画界の人も戸惑ってるような気がしてます。トランプさんへの直接的な皮肉や批判で訴える人もいるし、敢えて普遍的なテーマを描くことで、トランプさんの異質さを際立たせようとしている人もいるのだと思います。
『荒野の誓い』などもその文脈から生まれたのではないか、と思ってます。
>>としさん
貴殿の本作のレビューが見当たらなかったので、僭越ですが私のレビューにご返事させて頂きます。もしお読み頂けたら幸いです。
コメント、ありがとうございます。又、私などに貴重なお言葉を頂き、大変恐縮しております。ボキャブラリーもセンテンスもさっぱり持ち併せていない自分ですので、こうしてネットにアップすること自体、恥の至りです。
私の文中の指摘ですが、多分、パンフレットにその答えが記載されているのが可能性大です。公式解釈、評論家の的確な推察等々、多分読めば納得する答えが解説されているのでしょうね。私自身はパンフは買わない主義なので、謎は謎の儘、浮遊させておくしかありませんw 幸か不幸かすぐ忘却の彼方に消えてしまう低容量脳力なのでw