「楽しもうと努めたけれど…」劇場版おっさんずラブ LOVE or DEAD ももこさんの映画レビュー(感想・評価)
楽しもうと努めたけれど…
ドラマからの大ファンで、とても楽しみにしていました。オフィシャル本もムビチケも買って、公開早々に見に行きましたが、なかなか評価をつけることが出来ずに今になりました。
私は子育ての合間に時間を作って、一度きりの鑑賞チャンスだったし、思い切り楽しもうと思ってました。いざ始まって、ギャグパートでは細かい事は考えずに笑ったし、素敵な俳優さん達を大画面で観て、目の保養になりました。
けど内容は…、気持ちがなかなか入り込めず、爆発シーンではついにしらけてしまい。クライマックスで感動できなかったら、どんなに甘くつけても星2だと思いました。
入り込めなかった理由は、既に多くの人が書き尽くしてる通り、大切な部分を省き過ぎと、キャラ改変だと思います。
私はいわゆる腐女子ではないけれど、もっと主人公二人の日常や、愛のある所をしっかり描いてほしかったと思います。妄想や二次創作で補完をしないからこそ、作品内で見せてくれなければわかりません。
宣伝をたくさんしていたから、初めて観る人もいたでしょうし、ドラマのリアタイ組だって一年ぶりです。映画の中で改めて、春田っていい奴だなーとか、二人の間に愛があるんだなーって描いてからの、事件でなければ、登場人物達に心の寄せようがありません。
それから、私は連ドラの春田がとても好きでした。ポンコツなだけじゃなく、みんなから愛されるに足る魅力を、田中圭さんが丁寧に吹き込んだはずの春田。映画は別人のようだった。魅力を見せるシーンが無かったというより、ストーリーに合わせるために動かされているように感じました。
冒頭の変な指輪をウカウカ買わされるところからずっと、春田ってここまでポンコツだったっけ…って首を傾げ続けてました。あの部分はたぶん、カンフー映画っぽいシーンを撮りたかったためですよね。もしも、高級店の集まるような場所のブライダル店で、春田が襟を正して指輪を購入していたなら、カンフーシーンは描けなかったと思うけど、観る側にはその指輪の価値が重く伝わったし、それを大事にする春田の気持ちに入り込めたと思います。なんとなく行きずりで買わされた指輪を、怒りに任せてポイって海に捨てている30代男に、なんの魅力や共感が出来るというのだろう…。
そして、星を2ではなく1にしたのは、映画を通して伝えたい事もわからなかったからです。
爆発中に「歳を取っても、死んでも牧と居たい」っていうような事を、涙ながらに長々と語ってましたよね。あれが一番言いたいことでは無かったのでしょうか…。
あのシーンを見て、愛する人が傍に居る事こそが、春田にとって、人生で本当に大切な事なんだなと感じました。
なのに!そのすぐ後のラストでは、お互いに背を向けて離れて暮らす道を選んでいて、もう、???しかありません。
ラスト場面だけを切り取って、絵面だけを見れば、それぞれの夢のために、離ればなれを前向きに受け入れている二人の姿は、爽やかにも感じます。
私は、何が何でも春田と牧に結婚してほしいというわけではないので、お互いを思い合っての結論なら、離別も良いと思っています。
でも、爆発のセリフから、何のフォローもなく、離れて暮らす決断というのは、理解ができません…。他の方のレビューの通り、そこをかなりの妄想で埋めれば、なんとか自分なりの納得の仕方はあるけれど、こういうのは、オープンエンドですらないですよね。様々な想像がかきたてられるのではなく、辻褄の合う形を見つけることに苦労させられてる…。
きっと、役者さん達は、映画に出てきていない時間の流れの中で、春田達の気持ちがどのように変化して、関係が深まったのかを一生懸命考えた上で、演じていたのだと思います。
ドラマよりずっと彼氏らしくなった春田からの、力強く手を繋いだ花火大会や、ラストの、思いが溢れたようなキスの絵は、ストーリーは無視して、そこだけ切り取ればとても美しかったです。私はもう、そこにお金を払ったんだと思うことにします。
言っても詮無いことですが、長い爆発とかアクションがなくても、間とか、美しいカットがたくさんあって、何度でも観たくなるような邦画ってたくさんあります。そんなんだったら良かったのにな。
ドラマの続きで転勤から帰ってきて、ようやく二人暮しが始まった何気ない日常の中で、キラキラした場面を並べて、居間のソファにでも並んで座りながら、同じように手をつないで、ニコニコしながら「死んでも一緒に居たいな」って言ってくれた方が、個人的にはよっぽど感動できました。
あと最後にもう一つ、五角関係の触れ込みの嘘。セクシーな沢村一樹さんが関係に絡んでくるのを密かに楽しみにしてたのに。ポストカードの狸穴のセリフも、めちゃくちゃカッコいいと思っていたのに。あれはなんだったのか…。悪い意味で期待を裏切られて、そこもガッカリでした。