「素敵!でもカタルシス不足。」マイ・ブックショップ ゆめさんの映画レビュー(感想・評価)
素敵!でもカタルシス不足。
まず正直、「えぇー!ラストこう着地しちゃうの!?」と物語としては個人的に消化不良感が否めない。
でも素敵なところもたくさんある作品ではあった。
戦争で夫を亡くした本好きの主人公・フローレンスは長年の夢だった、町で唯一の書店を開店させる。
クリスティーンという聡明で気の合う少女も雇い、経営は一時はうまくいくかと思われたが、彼女が書店を開店させた物件を狙っていた町の有力者に妨害され、
結局は店を手放し、町を離れることを余儀なくされる。
フィクションの中でくらい善意の側に勝ってほしい(勝たなくてもせめて救済はほしい)身としては、フローレンスが町を去るラストにモヤモヤが残る…。(たとえ彼女の志や勇気はクリスティーンに受け継けついだとはいえ。)
ちなみにこの作品、割と嫌な奴等が出てくるのでこれから観る方は心したほうが良いかも。
でも、イギリスの田舎の風景の閉塞感と美しさ(灰色の海、風にそよぐ穀物。どこか日本みも感じる)は良かったし、主演女優さんはチャーミングで素敵だった。
劇中の書店や登場人物の衣装もお洒落で素敵。フローレンスやクリスティーンのお洋服がとても可愛くて印象的だった(作中で不評だった赤い(深い栗色)ドレスも素敵だった)。
あとは私の心を打ち抜いた初老の読書家・ブランディッシュさん。彼の不器用な愛にきゅんきゅんした。
切ない瞳、不器用な掌へのキス。フローレンスの力になりたくて、引きこもり気味だったのに外に出て単身ボガート夫人邸に乗り込む(でも最終的に暴言を吐いて立ち去る)健気さ。
ふたりでお茶するシーン、海で会話するシーン、ひそかにスクリーン前でときめきが止まらなかった私であった。
見所はあるんだけど、ストーリーのラストはああなるにしてももう少しフローレンスに救いが欲しかったなあというのが個人的な想い。