劇場公開日 2019年12月13日

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「ゾンビ×ミステリーの夜」屍人荘の殺人 サブレさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ゾンビ×ミステリーの夜

2019年12月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

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CMで謎解きエンターテインメントみたいな紹介していたのに!その実はゾンビ映画!ゾンビと本格ミステリの融合!
ゾンビを謎に組み込んだミステリーだと気づいた瞬間、脳をよぎったのはひぐらしシリーズだったが、ゾンビはただひたすらに単なるギミックで、ゾンビという特殊性がトリックに影響を与えることはなかった。金田一でいう伝説・伝承やTRICKでいう怪しいオブジェや信仰と同レベルの扱い。それがいい。

私はゾンビ映画がとても好きで、次々と要素を取り込み広がり続けるゾンビ映画にきらめく希望を感じている。コリン LOVE OF THE DEAD、高慢と偏見とゾンビ、ゾンビの中心で愛を叫ぶなど、死人がよみがえってパニックになるだけでなく、これらのプロットを超えた新しい機軸を打ち上げたゾンビ映画はたくさんある。
この屍人荘の殺人もそうなる可能性を秘めている。この映画におけるゾンビの扱いは非常に淡白で、情に流されて命を落とす人間が情緒たっぷりに描写されることはない。ゾンビ映画らしく疑心暗鬼や団結などは描写されるものの、それらがそのまま殺人鬼に怯えるというミステリの土台として生きているのがとても面白い。
ミステリ部分も、ちゃんとしたトリックが使われていてよかったのではないか。

ただ、手放しでは絶賛できない。ストーリー全般がどうも甘い気がしたからだ。
まず、登場人物が出そろったあたりで標的と犯人がわかってしまう。そして、標的と犯人がわかってしまうと、なんとなく動機も想像がつく。じゃあ、それをどんなドラマチックに明かすのかと言うと、ものすごく淡々としていて、あっけなかった。
殺人のひとつひとつはとてもドラマチック。演出が活きていたと思う。謎解き最中のちょっとしたギャグ描写もかなり好き。なのに、肝心のクライマックスで盛り上がらない。クライマックスで盛り上がってさえいれば絶賛したのに。

最後にもうひとつ。なんでゾンビ映画と銘打たなかったのか。これが不満。ワールドウォーZのときもそうだったけど、売れそうなビッグタイトルほど劇場公開時にゾンビ映画だということをひた隠しにする傾向にあるのが好かない。そのくせ売れてない映画はゾンビと関係ないのに、DVD販売時にパケやタイトルにゾンビと入れたりするんだ。

サブレ