「面白かったです!/この映画が表現していたもの‥(超絶ネタバレなので、必ず映画を見てから読んで下さい!)」屍人荘の殺人 komagire23さんの映画レビュー(感想・評価)
面白かったです!/この映画が表現していたもの‥(超絶ネタバレなので、必ず映画を見てから読んで下さい!)
(超絶ネタバレなので、必ず映画を見てから読んで下さい!)
面白かったです!
葉村譲(神木隆之介さん)の優しさと可愛らしい欲求、剣崎比留子(浜辺美波さん)も可愛く小憎らしく魅力爆発で、明智恭介(中村倫也さん)の切れ者のようで抜けた感じも魅力だったかと。
その他の登場人物の人たちも個性的で魅力あり、演出もポップに仕上がりこれはこれで良かったです。
そして数々の謎の整合性も見事で、(人間心理を正面から描く作品ではないので星は3.5ですが)解決編からの振り返りも納得感がありました。
‥以下ネタバレ‥
映画が終わって振り返ってみると、明智恭介(中村倫也さん)の行動にグッと来たりもしました。
明智は犯人を事件が起こる前に発見してしまいます‥
明智はこれまで犯人を当てたり当てなかったりしたので、今回はたまたま推理が当たって犯人を見つけてしまったのでしょう。
しかしその犯人の発見は明智自身に悲劇をもたらします。
明智は犯人を見つけながら、その犯人を助けてしまいます。もし犯行を防ぐためなら犯人を助ける必要はなく、その人物を助けず見捨て自分だけ逃げれば良かったはずです。
でも明智は犯人を助け、犯行を犯させるペンションの階段を登らせて逃がします、明智自身は犠牲になりながら‥
その姿は明智の”優しさ”だったと思われます。
犯人は物語の中で見事に犯行を遂行完結します。
しかしその動機もまた犯人自身の”優しさ”から来るものだったとは‥
犯人は犯行を遂行完結し、生きる気力を失ってしまいます。
しかしその犯人の手を取り危機から助けたのは今度は(剣崎比留子(浜辺美波さん)に「君は優しいね」と指摘された)葉村譲(神木隆之介さん)でした。
明智をペンション入口の階段で助けられなかった葉村はその想いも胸に、犯人の手を引っ張り上げ、生き延びらせるために屋上に向かう階段を登らせます。
その姿もまた葉村の”優しさ”だったと‥
しかし犯人は結果、生き延びることが出来ませんでした。
犯人は、自身”優しさ”から来る動機で犯行を完遂し、しかし自身は生きる希望をかすかに葉村の階段で手を引く”優しさ”に見つけながらも、助かることは出来ずに自らの命を絶ちます。
そして映画のラストは明智と葉村の再会の場面でしたが、葉村の”優しさ”ではどうすることも出来ませんでした。
その結論は、剣崎比留子の決断でもって完結されて、物語は終了します。
(ここでの比留子の決断は、いわば【残酷さ】を含めた世界と自身に対する深い洞察理解の元、仲間を救い生き延びる意味を示し成された重い決断だと言えます‥)
このポップな映画の背後に貫かれてるのは、”優しさ”とそれで助けることは出来ない現実の【残酷さ】だったと感じました。
(周りで起こった現象が現実の【残酷さ】のメタファーとも)
現実でも最近、映画の犯人の動機のもとになった事件と似た事件が起こり、しかし現実の犯行者らは示談で罰せられることなく終わりました。
自ら命を絶つ話も、大阪の女子高生がビルから飛び降り自殺する映像がSNS上で流れた事も最近ありました。
でも私たちはそんな【残酷さ】を無視しているわけではありません。
マスメディアや自分を棚に上げた識者らは、世間に寛容さが無くなったと騒ぎ立てたりもしています。
しかし私たちは”優しさ”をちゃんと持っていて、そしてしかもそれで助けられるのはせいぜい身近の一人、あるいはその一人すら助けられないことを重たく静かに知っています。
この映画『屍人荘の殺人』は、そんな私たちの”優しさ”と、それでは救えない現実の【残酷さ】を、描いた作品だとも思われました。
ラストシーンの明智の後ろ姿は、それでも生き続けていいんだよ‥と言っているように感じました。
彼が、自身は【残酷さ】の中に墜ちて行きながら、犯行を犯させる階段を犯人に登らせたように‥
ポップで楽しい演出としっかりした謎解きだけでない、面白い映画だったと思われました。楽しませて下さりありがとうございました。