新聞記者のレビュー・感想・評価
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挑戦は買うがもったいない
シム・ウンギョンも松坂桃李も素晴らしい演技をしている。撮影監督の今村圭佑の作る陰影の強い映像も見応えある。なによりこの題材に挑んだことは高く評価されるべきだ。
しかし、いろいろ問題点も多い。「新聞記者」というタイトルで、原作が現役新聞記者の書いた本であるなら、観客が期待するのは記者による情報集めが権力を追い詰めていく展開だろう。
例えば、「大統領の陰謀」や「スポットライト」のように、記者たちがわずかなソースを手がかりに情報の糸を手繰っていき真相を突き止めるような。しかし、本作の主人公の記者は自分で情報を取ってこれない。情報を取ってくるのはもっぱら内調の杉原だった。なぜこの記者は自分の足で情報を取りに行かないのだろう。思わせぶりなことをツイートしてる暇があったら現場で情報を取る努力をしてくれと何度も思ってしまった。
森達也監督の「i 新聞記者ドキュメント」を観ればわかるが、実際の望月記者は、とてもアクティブに全国を飛び回っている人だ。内調の内部告発頼りでいいのか。それで「新聞記者」という存在の意義を描いたといえるだろうか。
藤井光監督の実力は確かだと思う。この作品はもっと良いものにできたはずだ。
「空母いぶき」に共通する邦画の挑戦と限界
忖度と同調圧力が増すこの国で、現政権に異議を唱えること(フィクションではあるが、定例会見における菅官房長官との“対決”で注目を集めた東京新聞記者・望月衣塑子の著書が原案)に重点を置く劇映画を製作すること自体が、とてつもなくハードルの高いチャレンジだっただろう。主演の一人である松坂桃李をはじめ名の通った俳優を集め、公開までこぎつけたことに心より敬意を表する。
ただ、肝心の女性記者役に日本人女優をキャスティングできなかったことが、邦画界の限界を示してもいる。一定以上売れている女優に“反体制”の色がつくのを、所属事務所が嫌ったのでは。韓国人女優シム・ウンギョンは健闘したし、帰国子女という設定にして日本語ネイティブでないこともエクスキューズしたが、望月記者のトレードマークとも言えるあの執拗な質問を劇中で再現できなかったのは言語の壁が一因ではなかったか。意欲作ではあるが、傑作への道は遠い。
部屋の照明をつけろ
森友・加計をモチーフにしている点以外は目新しい点はなく、よくある正義に燃えるジャーナリスト映画。
ほぼ予備知識無く観始めたので、途中から違和感が増えていったのだが、Wikipediaを見たところ、遺族と揉めてフィクションへ路線変更したらしい。
うーん、そういうとこ含めて、リアリティよりジャーナリストの願望を優先しているような気がする。
極秘資料を盗み出すくだりはあまりにも使い古された演出だし、引き出しに鍵すらかかってない。
そんな安っぽいサスペンス要素は省略すればいいと思う。
とにかくあらゆる室内の照明が暗いのだが、そんなことで物語に重厚感が出ると思ってるのだろうか。
特に内閣情報調査室。
まあ、どんな部署なのかしるよしもないし、リアリティうんぬんは野暮かもしれないが。
映画を通して安倍政権を糾弾するという本来の目的は果たせたのだろうが、映画の出来としては目を見張るものはなかった。
これはアクション映画!
善悪の二元論で語れない部分
NHKがやる報道系のドキュメンタリー番組を映画にしたような内容で、確かに映画として見れば幾つか画期的な試みがある。
20年前に起きたようなことを、証言録取を基にして構成するような番組は、基本的に当事者がすでに亡くなっていたり、現場を離れていたりして取材が困難なことと、利害の対立がない分だけ忖度の必要がないメリットの両面があり、真相は藪の中というのが定番の決着だ。
この映画は、リアルタイムで起きている事件をモデルに現政権の問題点や疑惑を鋭くえぐっている。各方面から圧力がかかっても不思議ではなく、完成までこぎつけて公開したのだから、製作者の功績は認められて然るべきだ。
しかも日本アカデミー賞を受賞したとあっては2重の驚きだ。映画を潰しにかかれば逆に注目が集まる可能性があるだけに、黙殺されてもおかしくない。
私も、後乗りで、それほどの評価をされたのなら見てみようと思いWOWOWで録画視聴したクチで、熱心に追いかけたわけでも何でもない。解説の小山薫堂氏が明言していたが「女優は誰もオファーを受けなかった」とか「内容の切り込み具合に問題があり、民放テレビ局では放送出来ないだろう」などのコメントがさりげなく痒いところに手の届く話だったので興味深い。
さて、肝心の映画としての出来なのだが、『クライマーズ・ハイ』を基準にして考えたら、あの領域まで辿り着けていないと言わざるを得ない。時間が経てば経つほど色あせてしまう内容だ。あくまでも、現実に起きている事件を元に、人間の尊厳と正義を追求する新聞記者をていねいに描いてあるだけで、例えば新聞もニュースもほとんど見ない人種には価値のない映画だろう。
日本映画としては画期的、という注釈付きの映画で、政治に詳しい人から見たら、恐ろしく極端な二元論で語られていることに、逆に不安を感じるのではなかろうか。確かに、こんな映画は日本では見たことがなかった。
観客を、それほどまでに阿保だと決め付けてかかっているのか、それとも製作陣がキレイごととして信じ切っているのか。私には、前者に感じられたのだが。
国家という大きな闇
日本アカデミー賞の主要な賞を総なめした作品なので期待していましたが、正直なところはまりませんでした。
主演の2人はそれぞれの立場での葛藤を見事に演じきっていたと思います。主演賞で納得。
では、何が足りなかったのか。主人公2人のそれぞれ大切な人である、父、上司が大きな国という組織の犠牲になり、その真相を追い詰めるストーリーだからこそ、後半から終盤にむけての盛り上げと緊迫感がもっと欲しかったです。
官僚側で圧力をかける人間はほぼ田中哲司さんだけで、しかも部屋も質素。見えなくても、もっと闇の部分を大きく圧倒的な力を見せつけるような何か演出があればさらによかったのではと思います。本当に逆らえない世界なのだと。
内容どうこう以前に余り面白くない
ウィンストン・チャーチルは、選挙とはロクデナシの候補者の中から一番マシなロクデナシを選ぶ行為と言ってる。そのためには情報を正しく精査する力が必要になる。
情報がテレビや新聞など一方的で恣意的なものしかなかった時代と比べて、今はインターネットがありますから自分で判断をしやすくなったはずだ。
その一方で、多くの情報の中には、いい加減な嘘、無知によるデタラメ、悪意ある煽動なども含まれるわけで、どこかの誰かが言っていたから本当とはならない。もちろん映画で描かれているから本当ともならない。
そういう意味で、情報を正しく判断しなさいというような内容の作品だったかなと思う。愚民になるなと注意喚起するようなね。好意的に解釈するならだけど。
内容についてツッコミたいところも多々あるが長くなるしネタバレになるので書かないことにする。
暗い雰囲気で内調を悪の組織かのように描写したり、別に悪いことでもないことまで悪いことのように言ったり、中立性はなく激しく片側に寄った、煽動的な内容ではあったけれど、まあ映画だし、悪くはなかったんじゃないかとは思う。
ただ、あんまり面白くないよね。
何かあったっぽい。何かあるっぽい。何かされたっぽい。っぽい、っぽい、っぽい。憶測と思い込みばかりで、調べを進めて確証を得る行動をほとんどしない。結果的には都合よくおさまるものの、そこに至るまでのハラハラとかドキドキとか、映画的高揚感というのがないんだよね。面白い演出なんかも特になかったしね。
見方によっては、何か出そうで中々出ないホラーコメディ的で面白いと言えなくもないが、フフッと場違いな笑いが出てしまうのは加点できることではない。
闇は深い
真実に迫ったドキュメンタリーに沿う作品
映画だから許されるが、実際の内閣情報調査室の人は良く思わないと感じた。
これはタブーだ。だから面白い。映画だから、忖度はない。
最後に杉原演じる桃李くんがつぶやく「ごめん」こそ、最期まで武士道心を貫ける現代日本人は万に一人もいないことを指していると受け取った。
単純なタイトル、そして純粋な志を持った「新聞記者」は、今やもう存在しないように思う。
良い教育を受け、些細な志を持って入社した高学歴の新聞記者たちは、自分にとってそれがどう影響するのかなどすぐに導き出してしまう。
これが現状だ。杉原は、最後の武士道精神を持っていた唯一の官僚だったわけだ。
この社会に喝を入れたのは日本人ではなく、奇しくも韓国人だったとするキャスト配置は、もう日本人の中に武士道精神を持った人間がいなくなったことを示唆している。
もうどこを探してもいない絶望と、その因子を韓国人に求めているのが、真実なのかもしれない。
この国の構図を群像として表現しながら、登場人物たちが当時の当事者となっていきつつ、それぞれの葛藤が同じように葛藤したかつての人物と同じようになっていくさまを描き、そして決断を迫るのだ。
そもそも、これはあの事件のモチーフではなく、現実として生物兵器実験施設であり、それがメディアによってもみ消され、砂粒となった情報がYou Tubeに流れていたことを思い出させる。同時に、事件は事件でなくなった瞬間でもあったのだ。そこに人々を動かす力は残っていなかった。
「誤報」 内調はそれらをご方とすることに成功したのだ。メディアも当事者たちも誰も口を閉ざした。
日本の構図がこの映画に詰め込まれている。
そして未だ誰も真実を暴露できないことが、この映画の最後として締めくくられているのだ。
映画とはいえ、よくこれを作ってくれた。これこそ真実の表現だ。
主役二人の名演技が緊迫感を高める
見えない圧力!! 自分に余儀なく選択を迫られる社会派ドラマ
見た方がいい
サングラスをかけた羊
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