劇場公開日 2019年6月28日

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「現在進行形のスクープを追う!慎重に作られたジャーナリズム映画」新聞記者 山川夏子さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0現在進行形のスクープを追う!慎重に作られたジャーナリズム映画

2021年8月2日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

モリカケ問題を追及する東京新聞望月衣塑子記者の同名の著作を原案にしたジャーナリズム映画。モリカケ問題を理解したい方、マスコミ志望の方、官僚志望の方、必見!

中学生くらいの子供さんなら、この話、概略は理解できると思いますが、ショックで人間不信になるかもしれません。親御さんや周りの大人の皆さんは、しっかりと子供さんと向き合い、民主主義について、時間をかけて話し合っていただくとよいのではないかと思いました。

(民主主義を成立させている三権分立(立法・司法・行政)。三権をチェックする第四の権力(報道)。さらに「三権と第四の権力をチェックする「世論」。「世論」も「報道」も、「立法」「司法」「行政」も人がやっている以上、判断を誤ったり暴走することがある。だからこそ、個々人が問題の本質を深く見極めて冷静に考える力が必要になってくる。
とはいえ、「個人」も考えが暴走することがある。

この作品を見るとモリカケ問題の発覚からスケールの大きさと闇の深さ、発覚前後の新聞社の動き、当事者たちの苦悩、もろもろの経緯を理解することができます。

個人的にはこの映画を観た後は、セットで望月衣塑子記者と同行して撮影したドキュメンタリー映画『ⅰ-新聞記者ドキュメント-』を観ることをお勧めします。連日、新聞やテレビをにぎわせていた「モリカケ問題」にまつわる登場人物が、望月さんの本気の取材――有態にいえば「ガチンコ対決」で彼女と腹の底を割って赤裸々な話を始めて、闘う新聞記者のリアルを観ることができます。

そして、この『ⅰ-新聞記者ドキュメント-』を観た後に、再度この『新聞記者』を観ると、これがなぜフィクションのドラマとして発表されたのか、「今も継続して続いている案件だからだ」と実感することができます。

新聞記者がスクープで世界を席巻するジャーナリズム映画では、ボストンの新聞社が巨大権力の大罪を暴いた実話を元に作られた米国映画『スポットライト世紀のスクープ』『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』(2017年)が有名ですが、こちらは「日本」の新聞社のなかで「巨大権力にあがらう」新聞記者の姿を丁寧に描いています。

全国紙のニューヨークタイムスやボストンのローカル紙の記者達と日本の新聞記者、どちらも等しく市民に密着して綿密に取材を重ねています。映画『スポットライト世紀のスクープ』に比べると、新聞記者の姿勢にパンチが欠ける気がします。ですが、スポットライトやペンタゴンペーパーズは過去の話、新聞記者は「現在進行形」で取材を進めている話で、氷の上を歩くような慎重さで過激な表現を極力排除して、製作したのではないかと拝察しました。

山川夏子