「タイトルがミスリード」新聞記者 yoneさんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルがミスリード
「新聞記者」というタイトル。
正直、これは作品を正しく表していないと思う。
この作品の主人公はどちらかというと官僚の方だろう。
作品自体は、森友・加計問題をベースにしてると思われる。
私は「記者たち」「ペンタゴン・ペーパーズ」や「大統領の陰謀」、マイケル・ムーア氏の作品など、アメリカのジャーナリスト精神を描いた作品は好きで何本も観ているが、その精神を日本の新聞・TVのマスメディアに期待するだけ無駄なので、そこは全く期待して観なかった。脚色もされてるだろうし。なので、変な期待外れはなかった。
主人公は韓国の方が演じられてたのね・・最後のスタッフロールで知った。やけに拙い日本語だなー、と思ってたら。ただ、海外で暮らしてて、いきなり日本で働き始めた人は、だいたいあんな感じの日本語なので、そこはリアリティを感じた。
取材の仕方に関しては経験ないからわからないが、あんなに簡単ではないのでは?と思う。もっと取材や調査が必要だろう。ただし、今の記者は政府の意向を無視した記事書くような気概のある人がほぼいないから、若い記者もたいした経験積めないだろうし、この主人公は大学でジャーナリストを学んだという設定でもないようだから(父親の死がきっかけでこの世界に入ったっぽい)、案外リアルでもこんな感じでネットで情報を集めてるだけなのかもなーと、逆にリアリティを感じた。
ストーリー的には、内調の随分な脚色はあったけど、今は内閣府に人事権限が集まって首相の応援団になってるのもその通りだし、普通にあり得る話だとは思う。
ただ、1点ちょっと考えさせられたのは、この若い官僚。
最後ああいう結末になったのは仕方ない。それこそ、普通にありえそうだし。まぁ、覚悟決めたなら最後まで意地を通せよ、とは思うけど。
私が気になったのはそこではない。
今の官僚制度の在り方だ。
私はIT業界でずっと働いているので、転職は当たり前だ。
だから、この官僚の葛藤が全く理解不能なのだ。
「何故、転職を考えない?」
50過ぎになっているならともかく、この官僚は30前後だろう?別の業界の別会社で十分に再就職できる。奥さんや子供がいるとかは全く関係ない。こんな自分の意志を曲げてまで、アホな上司の言うこと聞いて、何故内部告発した後で、官僚辞めて新しい人生を歩もうと思わない?そこが本当に理解できない。
まぁ、実際の官僚もこんなもんだろうな。
プライド高い上に、その世界しか知らないから、別業種がどんな働き方なのか、とか想像も付かないのだろう。それで「働き方改革」とか言われても。。。。
本来は、「政府の仕事」と「民間の仕事」を自由に行き来できるくらいがちょうど良い。しばらく政府の仕事やったんで、次は民間に行くかー、くらいのノリで転職できれば良い。そうすれば、こんな葛藤はまず生まれない。ドラマにはならないだろうけど、ドラマになるよりも、そっちのほうが圧倒的に良い社会だと思う。私も少し政府の仕事してみたいとも思うし。
その考えに至ったのは、観た甲斐があったと思う。
ストーリー的には不満はあったけど、俳優さんの演技は良かったし、今の日本のメディア状況の中でこの映画を作った気概は素直に評価したい。今回の参議院選挙の報道を見るにつけ、本当にNHK含めて民法もどうしようもないもんな。。
だから★4つ。
ただし、最後に付け加えておくと、今のどうしようもない内閣を支持しているのも(選挙に行かないのも)、くだらないワイドショーやお涙頂戴劇を見たがってるのも、過去の戦争で踊っていたのも、すべては「国民の責任」である。バカな国民がバカな政府やメディアを生み出している。政府批判もメディア批判も結構だが、まず行うべきは自己批判だ。自分の都合が良いだけのバカな情報を信じていないか?既得権益者に騙されていないか?「自分を信じて疑え」とは、そういうメッセージでもあるのかもな、と最後に感じた。