劇場公開日 2019年6月28日

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「登場人物の描き方ってこんなんでいいの?」新聞記者 天国のTOMさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5登場人物の描き方ってこんなんでいいの?

2020年2月6日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

現政権へ物申す立派な志の作品として見させて頂きました。あれこれ、首相絡みの想像が難しくないエピソードがいくつもあり、細菌研究の顛末は別としても、そのための資金が首相のお友達の企業に流れている・・・とか。その勇気には拍手をしたいと思いますが、残念ながら映画としての満足度はそれほど高くありませんでした。
特に内閣府の人たちの描き方はまるで二流のSF漫画みたい。優秀な職員たちが無表情にSNSにネトウヨのような書き込みをしてるなんてありえないし、ただただ隠ぺいと情報操作を部下に押し付ける田中哲志演じる上司の描き方は、さんざどこかで見たパターン以外何ものでもありません。まっとうな神経を持った人間が、死んだ神崎と松坂桃李以外いないような内閣府って何?。国会中継で議員に叱られたてアタフタしているだけが官僚ではなく、実際は頭の良いちゃんと仕切れる人がたくさんいるわけで、せめてそういう人たちの有象無象のリアリティのある人間関係の中に、この問題を放り投げてくれたら、もっと恐ろしい主題が浮かび上がって来たのではないかと残念です。
新聞社もそう。これだけの社運を揺るがすような政権への反旗を朝刊の一面を使って行おうっていうのに、あまりにもそこに葛藤がなさすぎる。北村有起哉のデスクが当初は上からの圧力に屈して手を引けと言っていたのに、証言者が実名を出していいと言っただけで、少し記事を直させて翌日には発行してしまう。社長にはどうやってOKを取ったのか。政治部の記者にもいろいろな意見の人がいるわけだし、絶対に反対もあるだろうにどのように説き伏せたのだろうか。官邸からの反論を想定して負けないだけの次の手を考える。そういうところを丁寧に描いてくれたら、見た人は納得してくれたんじゃないかな。この結末に持っていくには、そうした様々な真反対の意見をギリギリまで集約した結果でなければ、やはり陳腐な印象しか残らないと思います。

天国のTOM