劇場公開日 2019年6月28日

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「ちゃんとエンターテインメントに昇華したリアルタイムな社会派ドラマ」新聞記者 よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ちゃんとエンターテインメントに昇華したリアルタイムな社会派ドラマ

2019年8月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

東都新聞に送りつけられた医療系大学新設計画に関する極秘資料。情報提供者は不明で奇妙な羊のイラストが添えられているのみ。記者の吉岡エリカは取材に乗り出すがなかなか情報が得られない。一方外務省から内閣調査室に出向している官僚の杉原は現政権に都合の悪い人物に関するネガティブな噂を流布したりして世論をコントロールする作業に従事していたがかつての上司、神崎が謎の投身自殺を遂げたことから自身の立場に疑念を抱き始める。

ドラマの中でネタにされる事件はどれも聞き馴染みのあるものばかり。これだけ突っ込んだネタをタイムリーに映画化したこと自体が画期的ですが、それよりもそんなネタをうまく織り交ぜながらもしっかりとしたドラマに仕上げた演出手腕が素晴らしいです。本作に出演した演技陣はその演技力もさることながら、忖度に屈しなかった態度をも観客の目に焼きつけたと思います。

主演の松坂桃李とシム・ウンギョンの二人の演技ももちろん見事でしたが、個人的には神経をすり減らして帰宅する杉原を待つ身重の妻を慎ましやかに演じた本田翼が印象的。トーンは異なるものの結構骨太の社会派ドラマだった『空母いぶき』でも素晴らしい演技を披露していたので今後も様々な邦画で活躍して欲しいなと思います。

シネコンの予告以外ではほとんど宣伝展開もしていないのに客席が8割埋まっていたのも嬉しかった。こういう社会派の作品でも全然客を呼べることを示した本作の意義は非常に大きいと思います。

よね