「邦画史上稀にみる問題作」新聞記者 さうすぽー。さんの映画レビュー(感想・評価)
邦画史上稀にみる問題作
フィクションなのにフィクションだとは思えない!
権力の闇を描く物語だとは聞いていましたが、想像以上にエグかったです…!
話の内容は、シム・ウンギョン演じる主人公記者が務めている新聞社にとある謎のFAXが送られる所から物語が始まります。
内容や演出からして去年で言うとスピルバーグの「ペンタゴンペーパーズ」を思い出すのですが...
正直これは「ペンタゴンペーパーズ」よりもエグい内容です!
と言うのも、この映画はノンフィクションとは違ってフィクションなので、物語がどう転ぶか解らないというのが怖かったです…
現実の情報操作に目が行きがちですが、この映画はミステリーやスリラーとしてもよく出来た話だと思っています。
文章ではない「絵」のFAXメッセージの謎を解いていくのも面白いし、内調との攻防は本当に緊迫感があります。
また、この映画は新聞記者が主人公だけあって観る前は記者が一方的に正義ぶってる内容になってるのではないかと懸念していたのですが、けっしてそんな事は無かったです。
あまり詳しくは話しませんが、記者達に対して普段みんなが不満に思っている悪い部分も描かれています。
なので、記者をステレオタイプ的に描かずに粗悪な部分も描いていたのは感心しました!
そしてキャストについてですが、
日韓ハーフのアメリカ出身の記者吉岡を「サニー 永遠の仲間たち」のシム・ウンギョンが演じています。
最初はたどたどしい日本語に違和感を覚えたのですが、彼女は表情が良いんです!
記者のように目の力がたまに強くなる感じも良く、中盤の泣きの演技は本当に凄かったです。
ただ、アメリカ出身の設定は要らなかったと思います。
やはり韓国訛りの日本語なので、アメリカンぽくないので、普通に日韓ハーフで韓国出身とした方が良かったかと。
そして、内調の杉原を演じた松坂桃李はまたしても素晴らしい演技でした!
先月の「居眠り磐音」でも良かったのですが、この映画は本当に度肝を抜かれました!
内調でありながら真実と圧力の狭間で揺れる葛藤を見事に表現されていて、一人の人間として非常に引き込まれました。
また、終盤の表情は暗くて静かなものながら鬼気迫るものがあり、圧倒されました。
今のところ邦画の中で今年1位の演技ですね!
その他、松坂桃李の上司役の田中哲司は静かながらゾクッとするほど恐怖を感じましたし、記者クラブのリーダーの北村有起哉も良かったです。
撮影も独特でした。
内調の仕事場では得体の知れない闇を表しているかのように暗めの証明であったり、逆に新聞社のシーンはドキュメンタリーっぽく見せるかのようにハンドカメラが多かったです。
と言うように、映像のどこが良かったとかは他にも出てくるのですが、やはり僕のなかで印象的だったのは"現実"でした。
自分は普段、SNSで政治や社会情勢の事に全くと言っていいほど触れないのですが、それでもニュース自体はチェックしているのでモデルになったと思われる2つの事件は当然知っていました。
しかし、これらの事件は結局真相はウヤムヤにされたままなので「あれは何だったんだろう」と僕は非常にモヤモヤしたのを覚えています。
そして、この映画ではそれらが内閣情報捜査室(内調)の陰謀という風に描いていました。
何度も言うように映画自体はフィクションです!
しかし、内調の行動があまりにもリアル過ぎて、フィクションであることをどうしても疑ってしまうのです。
ただ自分は、その内調の田中哲司の言動や行動にも少し理解出来る自分もいたりして、その辺も複雑な心境でした。
要は正義VS悪ではなく、
真実VS正義なのではないでしょうか。
だからこそ、この映画を観て怖くもなりましたし、同時に"怒り"と"やるせなさ"を覚えました。
この映画を観た後2,3時間はそれらを悶々と考えている自分がいました。
この映画はまさに"今"観てほしい映画です。
一人一人がこの映画を観て、今のこの世の中についていろいろと考えるきっかけになってほしいと願っています。