劇場公開日 2019年5月3日

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「キュートだけれどピリッ!とシビれるアクションアドベンチャー」名探偵ピカチュウ 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5キュートだけれどピリッ!とシビれるアクションアドベンチャー

2019年5月11日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

楽しい

興奮

世界的メガヒットゲームシリーズ『ポケットモンスター』の
人気者・ピカチュウが主人公のアドベンチャー映画が登場!
なお僕自身はゲーム未プレイ&アニメ未鑑賞だが、
弟が当時夢中でゲームをプレイしていたこともあり、
多少は『ポケモン』の内容を知っております。

今さら説明の必要も無いかもだが、
『ポケモン』は1996年にゲームボーイで第1作目が
発売されて以来、関連作は80作以上、世界売上本数
は公式に発表があった2017年時点で3億本以上!
1997年放映開始のアニメも国内外でヒットし、未だ
放映中という文字通りのモンスターコンテンツである。
スマホゲームアプリの『ポケモンGO』が
社会現象となったのも記憶に新しいですね。
で、そのなかでもシリーズ当初から人気なのが、
電気を操るネズミポケモンのピカチュウな訳です。
かのミッキーマウス卿と並んで世のネズミの社会的
地位向上に貢献されているネズミ界の名士ですね。

...

あらすじ。
舞台は人間とポケモンが共生する大都市ライムシティ。
優秀な探偵だった父が死んだとの報せを受けた主人公
ティムは、父のパートナーであり、自分の言葉を
理解できるピカチュウと共に父の死の真相を追う。
事件の裏には都市を揺るがす巨大な陰謀が……。

さて、本作は『ポケモン』の知識が全く無いとちょっと
置いてきぼりを食らいそうな部分がある。例えば以下の
予備知識が無いと流れがピンとこない可能性があるので、
ここでネタばれにならない範囲で言及しておこう。

・ゲーム1作目で登場した"ミュウツー"は、遺伝子操作
 で生まれた人造のポケモンで、超強力な念力を操る。
・アヒルのような見た目の"コダック"も念力を操れる。
 頭痛持ちだが、頭痛がひどくなると念力も強くなる。
・コイのような見た目の"コイキング"は基本最弱だが、
 "ギャラドス"という凶暴なポケモンに変化できる。

...

見所はなんといっても、わんさか登場するポケモン達!
かわいいの、いかついの、奇妙なの、端から端まで
ポケモンだらけで、恐らくファンの方でもコマ送り
再生でもしなければ全部は見つけきれないのでは。

現実の世界にポケモンを追加するのではなく、
現実に存在する動物をポケモンに置き換えることで
『もしも本当にポケモンが存在したら』をしっかり
感じさせてくれる点が、観ていてヒジョーに楽しい。
人間とポケモンがお互いをパートナーとして共生し、
ポケモンの様々な能力を生活に活かしている描写も、
ひとつひとつがほっこりした笑いになってます。
(自分のお気に入りは道路のド真ん中で寝てるカビゴン)

見た目についても、現実の人間と並べても違和感が
無いように細かく作り込まれていると感じた。
カメがモチーフのポケモンなら本物のカメの動作を、
カエルがモチーフのポケモンなら本物のカエルの肌質を、
といった具合に、質感や動作はリアルに、だがフォルムは
変え過ぎず、『現実にいそうだけどアニメのように
キュート』という丁度良い塩梅に仕上がっていたと思う。

そして主人公ピカチュウ!
声はオッサンだし、めっちゃ喋るし、コーヒー
中毒だけれども……あらカワイイ。まあカワイイ。
おなかの柔らかい所をめっさモフモフしたい(子猫か)。
両脇つかんで持ち上げて体プランプランさせたい(子猫か)。
ちょっと弱気な人間側の主人公ティムとお調子者な
ピカチュウとのやりとりは笑えるし、それでも終盤
のダイナミックな活躍ではビシッと決めてカッコいい。

...

ただ、ミステリ要素は“名探偵”というほどには強くない。
手掛かりから手掛かりを辿っていく流れも割と強引な
部分があったりする(中盤で突き止めるあの場所は、
記者さんが最初から持ってた情報なので、序盤の
捜査は要らなかったんじゃ……ってなっちゃうよね)。
また、人間側の主人公ティムが、ポケモンが苦手で
あることを描く序盤の流れは粗いし、先述通り、元の
『ポケモン』の知識が無いとわかりにくい部分もある。

だが明らかになる陰謀はなかなかにイカれてて好きだし、
途中で大掛かりなサプライズも用意されている。
後半はアクションアドベンチャー的な見所もたっぷりだ。
ピカチュウVS火竜リザードンの地下闘技場バトル、
カエル忍者ゲッコウガ襲来や言葉そのまま天地が
ひっくり返るパニックシーン、クライマックスを
飾る都市空中戦も大迫力!

ラスト近くの展開にもほろっと来てしまう。
この映画は、過去の出来事がもとで心の距離の
開いてしまった父の気持ちに息子が再び向き合う
ドラマにもなっていて、最後のひと仕掛けには
思わず目頭が熱くなってしまった。
親の心を子は知らず、子の心を親も知らず。
子も親も、お互いが成長するまで待たないと、
相手の気持ちに気付けないこともあるようで。

...

以上!
ポケモンをかじった程度に知っている方なら、
ミステリ要素を利かせたアクションアドベンチャー
という心構えで観れば楽しめるんじゃなかろうか。
観て損ナシの3.5判定です。
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余談:
「あの可愛いピカチュウの声がオッサンだなんて
アタイ米国を許せへん」という方も居られるかもなので、
最後に注釈。今回の映画化の原作はニンテンドー3DSで
発売されたスピンオフ作『名探偵ピカチュウ』であり、
そこのピカチュウの声がやっぱりオッサンなんである。
つまり今回のピカチュウに限っては「公式がオッサン」
なのであしからず。
また、映画を鑑賞済の方はご存知の通り、その設定にも
物語上でのひとヒネりがあるとも付け加えておく。

浮遊きびなご