「ラストシーンでデイリリーを植えるアールの後ろ姿 それは2020年のアメリカの後ろ姿なのです」運び屋 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
ラストシーンでデイリリーを植えるアールの後ろ姿 それは2020年のアメリカの後ろ姿なのです
愛してるメアリー
昨日より今日の方が?
明日はもっとだよ
第1回目
カーラジオから宗教の時間
イエスは迷える人を救うために来た
局を変える
お気に入りのオールディーズが流れ出す
思わず一緒に口ずさむ
君を愛してる
昨日よりも今日
今日より明日はもっと
Spiral Staircaseの「モア・トゥデイ・ザン・イエスタデイ」という曲
白人男性5人組、1969年ビルボードの12位まで上がったヒット曲
ちょうど50年前
アールは40歳だった
ベトナム戦争たけなわ
しかしアメリカは絶頂期だった
外で認められるほうが、ずっと大事だと思った
家での俺は役立たずだから
アール、メアリー
縮めて読むと何となくアメリカと聞こえ無くもない
つまり、アールとメアリーはアメリカの戦後そのものだった
世界の為にとがむしゃらに働いて、戦った
でもそのために国は疲弊してしまった
今のアメリカは老人になったアールとメアリーのようだ
偉大なアメリカ
そんなことメアリーも娘も孫娘も求めてなんかいなかった
家族の為に尽くしてくれる父、平和で安穏な暮らしであれば良かった
もう昔のように羽振りの良い事はできない
だけども見栄は張りたい
周囲の者が困っているなら援助してやりたい
そのためになら多少怪しげな仕事でも金になるならと手を出してしまう
これはヤバいと思ってもまあいいかと目をつむる
気付けばドップリ浸かってもう抜け出せない
単なる老人の物語なんかじゃない
これはアメリカの半世紀の物語だ
アールとはアメリカそのものの暗喩だ
デイリリーの花言葉
「憂鬱が去る」や「苦しみからの解放」「憂いを忘れる」などです
アメリカは今や老いました
憂鬱であり、苦しんでいます
正に2020年のアメリカ大統領選挙はそれです
そしてコロナ禍に蝕まれています
勝ったのはバイデンと言う老人
どこかクリントイーストウッドに似ています
彼は偉大なアメリカを取り戻すとは言いません
しかし、外で認められる事が大事だと言っています
トランプの方がメアリーの望むことを言っているように思います
バイデンはアールのようなアメリカに戻すと言っています
現実の今のアメリカは、麻薬や暴力に満ちてしまってます
外国人達が、ますますいいようにアメリカを利用し蝕む一方なのです
メキシコの屋敷でのシーンは、クスリ、女、暴力で大抵の人間は言いなりにされてしまうことを説明しています
若者達は彼らに取り込まれて転落するか、彼らを取り締まることに忙殺されてしまっているばかり
しかもネットに依存して自分の頭で考る力を失っています
言葉尻だけ政治的に正しいのかだけを問い、本質に目を向けることを忘れてしまっている
パンク修理のシーンはそういう意味だと理解しました
アメリカの理想だった未来に目を向けている若者なんかもうどこにも居はしないのです
もしかしたら、アメリカの理想なんて、メアリーの様に埋葬されてしまったのかも知れません
それでも思わず一緒に口ずさむ
アメリカを愛してる
昨日よりも今日
今日より明日はもっと
ラストシーンでデイリリーを植えるアールの後ろ姿
それは2020年のアメリカの後ろ姿なのです
アールの着ていた衣装は特典映像で、過去の出演作で彼が役の中で着ていたものばかりだと知りました
クリントイーストウッドが出演した様々な映画
それを振り返ってみるとアメリカの半世紀も思い返されてしまう
そのような効果を狙ったのだと思います
若い時に着ていたであろうスーツはお洒落で生地も仕立ても良いものです
2007年のリーマンショックとネット販売に押されて農園が差し押さえになってからは、安物の量販店のカジュアル衣料ばかり
大阪、東心斎橋にある、とある馴染みの音楽バー
少し前ひさびさに行ってみると、Spiral StaircaseのアナログLPレコードをJBLのスピーカーで鳴らしていました
この曲「運び屋」で掛かっていたんです
いい歌でしょ
それをこのバーのマスターから教えてもらいました
お嬢さん方、会場を間違えてますよ
美人コンテストの会場は3階ですよ
そんな軽口を言える老人に成りたいものです
アールとメアリーの物語
それは日本にも多少翻案すれば、そのまま当てはまるのかも知れません
日本版リメイクを作るべきだと思いました